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2016年03月10日

メトホルミンにがんを予防する効果 大腸ポリープの再発リスクを低下

 糖尿病の治療薬である「メトホルミン」に、大腸ポリープの再発リスクを下げる効果があることを横浜市立大学の研究グループが突き止めた。大腸ポリープは進行してがんになる可能性があり、大腸がんの予防につながると期待される。

 研究は、横浜市立大学肝胆膵消化器病学の中島淳教授、日暮琢磨助教らの研究グループによるもので、医学誌「Lancet Oncology」オンライン版に発表された。
メトホルミンを服用している患者はがんの発症が少ない
 大腸がんを発症する人は増えており、がんの中でも患者数が第1位、死亡数が第2位になっている。便潜血による健診や、内視鏡検査によりポリープを切除すると、大腸がんの死亡率を下げられるが、切除後の再発やがん発症などが問題となっている。

 一方、糖尿病の治療薬のひとつであるメトホルミンは、1950年代から使われており、長い歴史があり安全性が確かめられている。

 メトホルミンを服用している糖尿病患者は、服用していない患者にくらべ、がんの発症が少ないという報告があり、特に大腸がんに関しては、予防効果を示す研究が多数発表されている。

 中島教授らの研究グループは過去の研究で、このメトホルミンに注目して、大腸発がんのマウスに投与すると大腸腫瘍が抑制されることや、ヒトの直腸にある前がん病変のマーカーが減ることを突き止めた。

 今回の研究では、大腸ポリープを切除した患者151人にメトホルミン250mgを服用してもらい、効果を調べた。1年後の大腸ポリープ再発率は、偽薬を飲んだグループの52%に対し、メトホルミンを服用したグループは32%と約4割少なかった。
メトホルミンにがん予防の効果があるかを検証
 研究によりメトホルミンが大腸がんの予防薬として有用である可能性が世界ではじめて示された。試験期間中にメトホルミンにより副作用が出た患者はいなかったという。

 大腸ポリープの再発率を下げる薬はアスピリンや非ステロイド性抗炎症薬が知られているが、消化管出血などのリスクがあり予防法としては確立していない。

 中島教授はメトホルミンの特徴として、(1)副作用が少ないこと、(2)作用機序が明らかなこと、(3)服用しやすいこと、(4)安価なこと――を挙げている。

 「メトホルミンにがんの予防に本当に効果があるか、長期間の試験をし、さらに検討したい」と話している。
横浜市立大学 先端医科学研究センター
Metformin chemoprevention trial for metachronous colorectal adenoma/polyps in non-diabetic, post-polypectomy subjects: a multi-centre phase 3 randomised controlled trial(Lancet Oncology 2016年3月2日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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