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2016年03月14日

「大麦」が血糖値上昇を抑えメタボを改善 「大麦ご飯」で食欲を抑える

 「大麦」が食後血糖値の上昇を抑え、コレステロールを改善し、食欲も抑えられる食品として注目されている。
 食後血糖値の上昇を抑える「βグルカン」は、精白米にはあまり含まれていないが、大麦には豊富に含まれている。また、疲労回復に役立つビタミンB1も含まれている。
大麦が血糖値を改善し、食欲を抑えるのに役立つ
 日本人に馴染みのある穀類は、白米、玄米、小麦などだが、近年は大麦が注目されている。精白米に大麦などを混ぜて炊く「雑穀ごはん」や、グラノーラやオートミールも利用されるようになり、最近は大麦を摂取しやすくなっている。

 大麦の胚乳部分には水溶性食物繊維である「βグルカン」が多く含まれる。「βグルカン」は、大麦の可食部である種子の胚乳と呼ばれる部位に含まれる多糖類。オーツ麦や小麦にも含まれるが、大麦は穀物の中でもっとも多くβグルカンを含んでいる。

 βグルカンは食後血糖値の上昇を抑え、血中のコレステロールを低下させ、メタボリックシンドロームを解消に役立つことが確かめられている。

 スウェーデンのルンド大学は、大麦を食べることで血糖値を低下できるという研究報告を発表した。

「大麦を食べるとことで血糖値が下がり、食欲も抑えられ、心血管疾患を予防できる可能性があります。食物繊維を摂取すると、それが短期間であっても、健康状態を改善できます」と、ルンド大学食品健康科学センターのアン ニルソン氏は言う。
大麦のβグルカンが腸内で善玉菌を増やす
 研究チームは、中年の男女に3日間、大麦粉を85%含むパンを1日3回食べてもらった。その結果、介入の11~14時間後に、参加者の血糖値やインスリン値が改善され、インスリン感受性が高まり、食欲も抑えられることが判明した。

 「大麦のパンを食べた後では、代謝と食欲を調節する消化管ホルモンが増加し、慢性的な炎症を減らすホルモンも増加していました。これは、糖尿病や心血管疾患の両方のリスク要因を減らせることを意味しています」と、ニルソン氏は言う。

 スウェーデンのヨーテボリ大学が行った研究でも、βグルカンが血糖値を改善し、腸内環境を改善する乳酸菌を増やすことが確かめられている。大麦に含まれるβグルカンが腸に達すると、善玉菌を増やし、食欲や代謝に関わるホルモンの分泌を促すことが判明した。

 「穀類の食物繊維を十分に摂取すると、腸内細菌叢(腸内フローラ)が改善します。大麦を食べる頻度や量を増やすと、善玉菌を増やすことができます。血糖値を良好に維持するために、全粒粉を使ったパンを選んだり、大麦をスープに入れて食べるなど、工夫することをお勧めします」と、ニルソン氏は指摘している。
大麦には食物繊維がバランス良く含まれる
 大麦100gに含まれる食物繊維は9.6g。精白米(0.5g)の19倍以上の食物繊維が含まれ、玄米(3.0g)に比べても3倍以上も多い。主食の「白米」を「麦ごはん」に代えれば、不足しがちな食物繊維をとることができる。

 白米を8割、大麦を2割にして炊くと、1食(150g)で食物繊維を2gとることができ、1日3食とると食物繊維を6g摂取できる。これは、国の食事摂取基準が推奨する1日の摂取量(男性20g以上、女性18g以上)を満たすのに十分な量だ。

 大麦には「水溶性食物繊維」が6割、「不溶性食物繊維」が4割とバランスが良く含まれている。

 水溶性食物繊維は、胃や腸の中でゲル状になり食べ物の移動を遅くするため、糖質の吸収がゆるやかになって血糖値の上昇を防ぎ、脂質の吸収を抑えたり、ナトリウムを吸着して排出する作用がある。不溶性食物繊維は、胃や腸の中で水分を吸って膨らむため、満腹感が得られやすく、食べ過ぎを防ぐ。
コレステロールを低減し、内臓脂肪を減らす効果もある
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部(監修)
 米国では「コレステロール低減作用があり、心疾患予防の効果がある」とし、大麦のβグルカンを一定量含む加工食品に対して健康強調表示が認められている。

 麦ごはんを食べる習慣は日本では江戸時代に定着したとみられている。明治時代に流行した「脚気」(かっけ)の原因は、糖質代謝に不可欠なビタミンB1の不足。海軍軍医であった高木兼寛が海軍兵の食事にビタミンB群を豊富に含む大麦を取り入れ、脚気患者を減らすのに成功した。

 それ以降、大麦の栄養価の高さは実証されているが、1970年代以降、食の欧米化が進むにつれて大麦の摂取量は激減した。戦後すぐの統計では年間100万トンだった消費量が、今では年間2万トンにまで減っている。

 大妻女子大学名誉教授の池上幸江氏らの研究では、大麦が食後血糖値の上昇を防ぐことが確かめられた。朝食に精白米だけを食べた人の血糖値は食後45分まで上昇し続けたのに対し、大麦ごはんを食べた人の血糖値は緩やかな上昇を示した。

 研究では、主食として大麦を50%含む麦ごはん(βグルカン3.5g含有)を1日2食、12週間毎日食べると、総コレステロールと悪玉のLDLコレステロールが低下し、内臓脂肪も減り、ウエスト周囲径が減少することが明らかになった。精白米のみを食べたグループでは内臓脂肪面積はほとんど変わらなかった。

 東京慈恵会医科大学附属病院栄養部は、大麦をとりいれたレシピを紹介した書籍「慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ」を監修した。同病院は、創始者の高木兼寛が麦飯で難病であった脚気を予防して以来、病院の昼食に麦飯を取り入れるなど、大麦との深い関わりを持ち続けている。

 同病院では、高木兼寛の教えに則り、昼食に麦ごはん献立を提供しており、続編となる大麦を使ったスイーツレシピ本も制作中だという。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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