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2016年04月21日

震災で発症が急増 エコノミークラス症候群を防ぐための6つの対策

 熊本県などで発生した一連の地震で、多くの人がエコノミークラス症候群とみられる症状で病院に搬送された。この病気は災害時でなくとも、健康だった人が突然に発症することがあるので注意が必要だ。
座って長時間を過ごす時には注意が必要
 長時間座ったまま過ごしたあと、歩きはじめたとたんに、急に呼吸困難やショックを起こし、ときには亡くなることもある――これが「エコノミークラス症候群」(深部静脈血栓症・肺塞栓症)と呼ばれる病気の典型的なケースだ。

 エコノミークラス症候群は、肺動脈が血栓によって閉塞することで引き起こされる。長時間狭い椅子に座ったままの状態を強いられると、足の血液の流れが悪くなり、静脈の中に血のかたまり(静脈血栓)ができやすくなる。この静脈血栓が歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺に到着し肺の動脈を閉塞してしまう。

 エコノミークラス症候群と呼ばれるので「飛行機でのみ起こる症状」だと思われがちだが、実は飛行機だけではなく、車や列車などで座席に座って長時間を過ごす時や、オフィスでのデスクワーク、長時間の会議などでも起こると考えられている。

 糖尿病や高血圧、脂質異常症などのある人は、血糖や血圧のコントロールが不良であると血栓ができやすい。高齢者、肥満のある人、妊娠中や出産後まもない人、外傷や骨折の治療中の人、手術やカテーテルによる治療を受けた人でも発症リスクが上昇する。エコノミークラス症候群は適切な対策をすれば、100%近い確率で発症を防げる。
エコノミークラス症候群を防ぐための6つの対策
 血液は異物に触れると固まる性質がある。血管の内側は血管内皮という特殊な細胞で覆われており、血液が異物と接触するのを防いでいる。しかし、高血糖や高血圧などが原因で血管が傷つくと、血管内皮の膜が壊れ、血液が異物と接触して血栓ができやすくなる。

 また、足の筋肉は「第二のポンプ」といわれ、筋肉が収縮・弛緩を繰り返すことで足の血液の流れを促す。そのためウォーキングなどの運動をすれば血液の循環が良くなる。しかし座ったまま長時間を過ごし、体を動かさなかった場合は、足の血液の流れが滞り血栓ができやすくなる。

 エコノミークラス症候群の診断や治療に詳しい日本循環器学会によると、エコノミークラス症候群を予防するためにもっとも重要なのは、座ったまま過ごす時間が長引いたときには、立ち上がってウォーキングなどをして足の血行を良くすることだ。

 さらに、▽シートに長時間、座った姿勢で眠らない、▽ときどき足首の運動を行う、▽ふくらはぎのマッサージを行う、▽十分な水分を補給する、▽脱水を招くアルコールやコーヒーを控える――とった点に注意する必要がある。

 「運動などがままならない場合には、弾性ストッキングを適切な指導の下、使用することで予防効果は高まる。歩行時の息切れ、胸の痛み、一時的な意識消失、あるいは片側の足のむくみや痛みなどが出現した場合には、早めの医療機関の受診が勧められる」と、注意を呼びかけている。

 厚生労働省は、エコノミークラス症候群の予防のため「足の指でグーをつくる」「かかとを上下に動かす」といった運動や、水分補給をするよう被災者に呼び掛けており、ホームページにQ&Aなどの情報を公開している。

 つま先を地面に付け、かかとを上下に動かす、ひざを両手で抱え力を抜いて足首を回す、ふくらはぎを軽くもむ――といった軽い運動を意識して行うだけでも、エコノミークラス症候群の予防に効果的だ。

深部静脈血栓症/肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の予防について(厚生労働省)
避難所における循環器疾患の予防のために注意すべきこと(日本循環器学会)
知って得するおはなし 血栓症ガイドブック(日本血栓止血学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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