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2016年05月24日
ウォーキングが13種類のがんのリスクを減少 運動でがんを予防
ウォーキングなどの運動を毎日行うと、がんの発症リスクを低下できることが、144万人を対象とした大規模な研究で明らかになった。運動により予防できるがんは、肝臓がん、肺がん、子宮体がんなど13種類に上るという。
毎日ウォーキングがんリスクを低下
ウォーキングなどの運動を習慣として行うことで、肥満を防ぐことができ、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防や改善に役立つことは広く知られている。これらに加えて、運動にはがんの予防効果もあることが明らかになった。
運動のがん予防効果は31種類のがんに及ぶことが、144万人を対象とした大規模な研究で確かめられた。研究は米国立がん研究所(NCI)、米国立衛生研究所(NIH)、米国がん学会(ACS)などの研究チームによるもので、「米国医師会雑誌(JAMA)内科学」に発表された。
研究チームは、米国や欧州で行われた12件の観察研究をもとに、144万人の19~98歳(年齢の中央値は59歳)の男女を対象に、生活習慣とがんの発症について11年間にわたった調査した。期間中に18万6,932件のがんが確認された。
解析した結果、ウォーキングなどの活発な運動を週に5日以上行っている人では、ほとんど運動しない人に比べ、がんの発症リスクが20%低下することが明らかになった。
ウォーキングをすれば多くのメリットを得られる
ウォーキングなどの運動がんの発症リスクを低下させるメカニズムについての研究も進んでいる。がんの発症リスクが高くなるメカニズムのひとつに、肥満や運動不足などによって引き起こされる「高インスリン血症」がある。
ウォーキングを毎日続けると、筋肉などで血糖を下げるホルモンであるインスリンの効きが良くなる。そのため体内でインスリンの過剰な分泌を防ぐことができる。
一方、肥満や運動不足の人は、「インスリン抵抗性」(インスリンの作用低下)が起こり、インスリンが過剰に分泌されやすい。これが「高インスリン血症」を引き起こし、高血圧や動脈硬化などが進行しやすくなる。インスリン抵抗性がある人では、肥満や脂質異常症(中性脂肪の高値や善玉のHDLコレステロールの低値など)も多くみられる。
インスリンが過剰に分泌されると、「インスリン抵抗性」の状態がさらにさらに強まるという悪循環に陥り、やがて2型糖尿病を発症する。
また、血液中のインスリンが多過ぎると、細胞増殖、成長促進など、さまざまな働きをするIGF(インスリン様成長因子)という物質の働きが活発になる。さらには細胞から分泌される「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質が慢性炎症を引き起こし、がん細胞がさらに増殖しやすくなる。
運動には「高インスリン血症」を予防・改善する効果があり、免疫機能を改善したり、女性ホルモンであるエストロゲンを減らしたり、男性ホルモンであるテストステロンを増やす作用もある。運動をして体脂肪を減らすと、これらのホルモンの分泌が調整され発がんリスクが下がる。
さらに運動を続けると、がんの発生を誘発する「活性酸素」や「フリーラジカル」の産生を減らし、細胞の老化を抑制する効果も得られる。
運動習慣のある人は健診を受ける回数が多い
一方で、運動する頻度の高い人では、皮膚がんの一種や前立腺がんの発症リスクが高いことも明らかになった。
「運動をよくする人は外に出る機会が多い傾向にあり、日焼けによって皮膚がんを発症するリスクが上昇するおそれがある」と、ムーア氏は説明する。
ただし、よく運動する人は健康診断を受ける回数が多い傾向があり、がんの発見率が高いことが影響している可能性もあるという。そうした場合、自覚症状がない軽症のうちにがんが発見でき、早期に治療を開始できる。
実際に欧米では、がん検診の受診率が向上した結果、がんの発症率は増えているが死亡率は減少している傾向がみられるという。
「適度な運動をすることがんを予防するために効果的です。それに加えて、適正体重を維持する、たばこを吸わない、アルコールを控える、健康的な食生活に変えるといった生活スタイルを加えるべきです」と、ムーア氏は指摘している。
Increased physical activity associated with lower risk of 13 types of cancer(米国立衛生研究所 2016年5月16日)Association of Leisure-Time Physical Activity With Risk of 26 Types of Cancer in 1.44 Million Adults(JAMA Internal Medicine 2016年5月16日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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