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糖尿病3分間ラーニング
インスリンを誤解していませんか? 早期に開始すると満足度が上昇
2016年11月14日

 「インスリン療法は重症になってからの治療法」という考えは誤解だ。インスリン療法を早期に開始することで、目標の血糖値に確実に到達できるようになる。インスリンを始めた人ほど、治療に対して前向きであることが調査で明らかになった。
 一方で、インスリンを打つのをためらう2型糖尿病の患者も依然として多い。「患者の不安感を軽減するために、患者と医師のコミュニケーションが必要だ」と専門家は述べている。
早期にインスリンを使う治療法が注目されている
 「インスリン療法は重症になってからの治療法」というイメージをもつ人が少なくないが、これはまったくの誤解だ。2型糖尿病を発症するとインスリン分泌能力は徐々に低下していく。最近では糖尿病の早期にインスリンを使う方法が注目されている。

 インスリン療法とは、「足りないインスリンを体の外から補充して、血糖コントロールを改善する」治療法。治療に用いる製剤中のインスリンは、体に自然にあるものと基本的に同じだ。

 「インスリン分泌低下」と「インスリン抵抗性」の結果として血糖が高くなるのが2型糖尿病だが、血糖が高くなると、その影響でインスリン分泌不足とインスリン抵抗性が悪化し、さらに血糖が著しく高くなることがある。

 これが「糖毒性」で、この悪循環を断ち切るには、いったん血糖値を十分に下げることが必要となる。それにはインスリンを使うのが効果的だ。

 インスリン療法により膵臓を休ませることで、その機能を保持・回復させることができ、「糖毒性」を解除できる。そのため糖尿病の症状の軽いうちから、インスリン療法を開始するのが効果的と考えられている。
インスリン療法はシンプルな治療法
 膵臓が分泌するインスリンには、1日24時間、一定量を分泌し続ける「基礎分泌」と、食事をしたとき一時的に分泌する「追加分泌」がある。糖尿病になるとこれらが足りなくなるので、足りない分だけ注射で補うという至ってシンプルな治療法が「インスリン療法」だ。

 2型糖尿病の早期で、膵臓のインスリン分泌能力があれば、血糖値を下げてインスリンを中止し、経口薬や生活習慣改善による治療に切り替えられることもよくある。

 インスリン分泌がなくなった段階でインスリン治療を始めた場合は、インスリン療法を中止できない。糖尿病の治療薬には、7種類の経口薬とインスリン製剤、GLP-1受容体作動薬などがあるが、こうしたインスリン以外の治療薬は、膵臓の機能がある程度残っている状態でなければ効果を期待できない。

 ただし、インスリンによって「膵臓の機能が低下する」ことはない。インスリン治療は、合併症を抑え健康人と変わらない生活をおくるために行うものだ。
インスリン治療を50年続けている患者も
 インスリン製剤には、注射後すぐに作用する「超速効型」、長時間緩やかに作用する「持効型溶解」、両方のタイプを合わせた「混合型」などがあり、患者の病態に合わせてさまざまなタイプが用意されている。

 持効型溶解インスリンの新しい製剤は、インスリンの作用のピークがなく血糖値が平坦に推移する。現在使用されているインスリン製剤の中には低血糖が起こりにくいものがある。

 また、先行するバイオ医薬品に比べ価格が安いが、品質や安全性、有効性は同等・同質のバイオシミラーインスリンも出ており、経済的な付加価値も高まっている。バイオシミラーインスリンについては現在、持効型溶解インスリンがある。

 現在、使われているインスリン注射用の注射針はとても細いものが使われており、「痛みをまったく感じない」という患者が多い。また、注射の手技も簡単で、ほとんどの患者が1回の指導で打てるようになるという。さらに、十分な知識と経験をもつ医師のもとであれば、インスリン治療は外来でも安全に行うことができる。

 インスリン治療を継続して、大きな合併症もなく現在も元気に過ごしている糖尿病患者はどんどん増えている。これからインスリン療法をはじめる人は、インスリン製剤の進歩の恩恵を受けられる幸運な患者だ。

 低血糖を起こしにくい「DPP-4阻害薬」「GLP-1受容体作動薬」とインスリン製剤を併用する治療も増えている。

 主治医からインスリンを勧められたら、どの製剤をどう使うかを医師とよく相談した上で、迷わず明日からの治療に取り入れてはいかがだろうか。
医師からインスリン療法を勧められても抵抗感をもつ患者が多い
 糖尿病のインスリン療法は、患者による自己注射が大きな比重を占める。そのため、患者の心理的な負担が大きい。日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムは、患者と医師の双方のインスリン療法に対する意識・実態調査を行った。

 調査は、2型糖尿病患者さんを対象にインスリン治療を行っている医師173人、および説明を受けたことはあるがインスリン治療を開始していない2型糖尿病患者148人、インスリン治療開始から1年以内の2型糖尿病患者50人を対象に実施された。

 調査結果から、医師が患者に療法変更を伝える際のためらいが浮き彫りになった一方で、療法を変更した患者は「HbA1c値の改善」「経口薬より高い効果」などを期待しており、治療に対して前向きであることが示された。

 日本イーライリリーが発表した主な調査結果は以下の通り――

・ 医師からインスリン治療に関する説明を受けたもののインスリン未治療の患者の89.2%が、インスリン治療について「わざわざインスリンを始めなくても、今の治療のままで大丈夫」と認識していることが明らかになった。

・ インスリン治療を開始した患者にインスリンに切り替えた理由を尋ねたところ、「HbA1cの値を改善したかった」(68.0%)、「経口薬では十分な治療効果が得られなかった」(58.0%)、「経口薬より高い効果を期待できた」(54.0%)という回答が多く、治療に対し前向きに考えていることが分かった。

・ 医師が考えるインスリン治療の開始がうまくいく2型糖尿病患者の共通点は「治療への意欲が高い」(20.8%)、「理解力がある」(17.9%)、「病識がある」(16.2%)だった。
インスリン療法を開始した患者は前向きのイメージをもっている
 調査結果について、奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井均教授は都内で開催されたセミナーで「2型糖尿病は進行する疾患。血糖コントロールを改善するために、インスリン療法が必要になる患者は多い。インスリンを早くはじめるほど、目標の血糖値に迅速かつ確実に到達できるという報告がある」と述べている。

 一方で、インスリン療法に対する抵抗感を抱く患者も多い。「インスリン療法を実際に開始した患者の多くは、治療に対して正のイメージをもち、満足度も高い。患者双方の心理的抵抗感やギャップを改善することで、より良い治療を行うことができる可能性が高い」と、石井均教授は言う。

 石井教授は医師や医療スタッフに対して「辛抱強く説明をしていけば、患者の気持ちは変化していく。あきらめずに説明を続けることが大切」と説く。

インスリン導入に抵抗のある患者とのコミュニケーションをサポート
 日本イーライリリーは、インスリン導入に抵抗のある患者とのコミュニケーションをサポートするプログラム「前向き!」を提供している。

 プログラムは、患者にチェックシートで簡単なチェックを行ってもらい、医師はそれをもとに患者のこころの状態を確認する。

 こころのステージでは、インスリン治療を始めるつもりはない前熟考期、開始を迷っている熟考期などがある。患者のこころの状態に応じた声掛けを行うと同時に、患者がインスリン治療の何に不安を感じているかを確認すると効果的だ。

 「前向き!」を使い、こころのステージ別に用意された資材を活用すれば、患者の1人ひとりのインスリン治療に抱く不安感を軽減し、インスリン治療への安心感や意欲を高められるように働きかけられる。

 なお、「前向き!」は、医療従事者がインスリンが必要と判断した患者さんに対してのみ、医療従事者から直接提供されている資材だ。

糖尿病患者さん向け情報サイト「Diabetes.co.jp」(日本イーライリリー)
[ Terahata ]

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