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2017年01月19日

アルコールを飲み過ぎないために 知っておきたい5つの対処法

 お酒は適量の場合はストレス解消の効果を期待できるが、量が増えると確実に健康を損なう原因になる。アルコールとの「上手な付き合い方」をご紹介する。
お酒は高カロリー 肥満の原因に
 アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次ぐ高カロリーの食品だ。カロリーの他の栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。

 はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのがお酒だ。さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。
アルコールを飲み過ぎないための対処法
 アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4〜5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題だ。

お酒を飲むときの注意点

・ 自分の適量を知るとともに、その日の体調にも注意する。

・ お酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。

・ 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。

・ お酒を飲むときは水も飲む。アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。

・ 短時間の多量な飲酒(一気飲み)を避ける。たとえ飲む回数が少なくとも、一時に大量に飲むと健康障害が起こりやすくなる。
純アルコール量で約20gが限度
 厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている。これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)となる。

 アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02〜0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。0.05〜0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。

 酔いが進むと次第に、理性をつかさどる大脳皮質の活動は低下していく。0.11〜0.15%の「酩酊初期」では、気が大きくなって大声を出し、怒りっぽくなる。さらに、0.16〜0.30%の「酩酊期」になると、鎮静効果が強くなり麻痺が小脳まで広がり、運動失調の状態になる。呼吸が速くなり、千鳥足になったり、何度も同じことをしゃべったりするようになる。

 一般的に、純アルコール量で約20gを限度とするのが上手なお酒の飲み方といえる。これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておける量だ。

 体重約60kgの人が日本酒にして2合のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3〜4時間体内にとどまる。それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6〜7時間かかる。

 これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかる。深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いになってしまう。
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない
 「糖質ゼロ」「カロリーオフ」といった表示をしたビールや発泡酒などの酒類が店頭をにぎわしている。しかし、「糖質ゼロ」と表示してあっても、カロリーは「ゼロ」ではないので注意が必要だ。健康増進法に基づく栄養表示基準では、飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば「カロリーオフ」と表示できる。

 実際には、量を少なくしていても糖質が含まれていたり、カロリーがある場合もある。そもそも酒類のカロリーは、糖質の量よりもアルコール度数の方が影響は大きい。アルコールは栄養表示基準で1g当たり7kcalで計算される。100mLは約100gなので、アルコール分5%であれば100mL当たり35kcal、350mL(レギュラーサイズ)では123kcalが目安になる。
寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
 アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくない。しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られている。つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなる。

 睡眠の質を高めたいのなら、就床前にはアルコールを飲まないのが望ましい。アルコールが体内から消失するまでにおよそ6時間がかかる。就床6時間前までに飲まないようにすると、気持ちの良い睡眠を得られる。
アルコールは血圧を上昇させる
 適量のお酒を飲むと、一般的に血圧が低下し、善玉コレステロールのHDLコレステロールが上昇する。適量に抑えていれば、血小板の凝集が抑制され、心臓疾患を抑えられることが知られている。

 しかし、大量に飲み続けると、血管の収縮反応が高まり、心臓の拍動が速まり、逆に血圧は上昇する。毎日の飲酒量が多い人ほど血圧の平均値が高く、高血圧のリスクが上昇することが多くの研究で確かめられている。
アルコールは低血糖の危険性を高める
 アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴って血糖値に影響を与える。多量の飲酒は糖尿病の危険性を高め、特に肝障害や膵障害が加わるとコントロールが難しい糖尿病になるため、糖尿病患者は多量飲酒は避けた方が良い。

 また、アルコールは低血糖を引き起こすことがある。特に食事を十分にとらずに飲酒すると低血糖になりやすい。それは食事量低下のため肝臓のグリコーゲンが減少しており、さらにアルコールの代謝に伴い糖新生(糖質以外の物質からグルコースを産生する作用)が抑制されるためだ。

 インスリン注射や経口血糖降下剤などでの治療中の患者では、低血糖がより起こりやすくなるので、食事をとらずに飲酒することは原則として禁止されている。食事をとるのであれば、低脂肪で高タンパク質の食品(豆腐・枝豆・イワシなど)を食べると良い。
アルコールはインスリン抵抗性にも影響
 アルコールの飲み過ぎは、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」に直接に影響し、2型糖尿病のリスクを上昇させることも分かっている。

 米国のマウントサイナイ医科大学の研究によると、アルコールを過剰に摂取すると、視床下部で炎症反応が引き起こされる。これにより末梢組織のインスリン受容体へのシグナル送信が阻害され、インスリン抵抗性が引き起こされるという。

 アルコール摂取はインスリン抵抗性を引き起こすだけではなく、食欲を亢進する作用もある。アルコールには、食欲を抑制するホルモンであるレプチンを減少させる作用がある。レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、視床下部にある満腹中枢に作用して、食欲を抑える作用がある。飲酒量が多い人では、レプチンの濃度が低下する傾向がみられる。

 アルコールは、アルコールそのものの作用のほかに、肝臓や膵臓の障害などのさまざまな因子を介して、血糖コントロールを困難にする。糖尿病のある人は、アルコール摂取に特に注意が必要だ。

 「酒は百薬の長」と言われ、飲酒は日常生活でさまざまな行事と深い関わりをもっている。飲酒は疲労の回復やストレスの解消あるいは人間関係を円滑にするなど、望ましい影響を与えてくれるが、その効果は適度な飲酒を守ることではじめて得られる。

 お酒と上手に付き合いながら、最高のコンディションで新しい年を迎えたい。

アルコール(米国糖尿病学会 2014年6月6日)
Binge Drinking Increases Risk of Type 2 Diabetes by Causing Insulin Resistance(マウントサイナイ医科大学 2013年1月30日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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