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2017年05月08日
糖尿病に関わる脂肪酸バランスと酵素を解明 新たな治療法に
2型糖尿病の発症には、脂肪酸のバランスの変化と、その変化を調整する酵素が関わっていることを、筑波大学の研究グループが明らかにした。
この酵素の働きを抑えて、脂肪酸バランスをコントロールできれば、糖尿病の予防や治療に役立つ可能性があるという。
この酵素の働きを抑えて、脂肪酸バランスをコントロールできれば、糖尿病の予防や治療に役立つ可能性があるという。
脂肪酸の過剰蓄積が糖尿病を引き起こす
2型糖尿病の発症と進展には、肥満などによるインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)と、それに対する膵臓のβ細胞のインスリン分泌の低下(β細胞の機能不全)が関わっている。
さらに、2型糖尿病では膵β細胞量が減少することが多いが、その病態や発症機序については不明な点も多い。
肥満にともなう脂肪酸代謝の異常や、臓器での脂肪酸の過剰蓄積が糖尿病を引き起こすことは「脂肪毒性」と言われているが、この脂肪毒性での脂肪酸の種類や組成についてはよく分かっていない。
そこで、筑波大学の研究グループは、パルミチン酸といった炭素数16の脂肪酸から、ステアリン酸、オレイン酸といった炭素数18の脂肪酸を合成する際に、またこれら脂肪酸のバランス変化に、それぞれ重要な役割を果たす酵素「Elovl6」に着目した。
そしてこの酵素ができない2型糖尿病のモデルマウスを作って実験した結果、このモデルマウスではインスリンを産生する膵臓のβ細胞が増え、細胞死である「アポトーシス」が減った。インスリン分泌量も増え、血糖値も低下した。
「Elovl6」を阻害する新しい治療法の開発へ向けて
モデルマウスの膵臓ランゲルハンス島では、オレイン酸とトリグリセリド(中性脂肪)の蓄積が減り、膵β細胞の減少を引き起こす炎症と、細胞への悪影響をもたらす「小胞体ストレス」が抑えられていた。
これらのことから、この酵素「Elovl6」を阻害すると、インスリン分泌を抑制するオレイン酸の過剰蓄積を抑えられ、パルミチン酸による脂肪毒性を軽減できることが明らかになった。
肥満にともなう代償性インスリン分泌を維持し、糖尿病を予防・改善できる可能性があるという。
今後の研究で、「Elovl6」の阻害や、脂肪酸の質の管理による、糖尿病の新しい予防法・治療法の開発につなげていきたいと、研究者は述べている。
研究は、筑波大学医学医療系の島野仁教授、松坂賢准教授らの研究グループによるもので、米国糖尿病学会が発行する医学誌「Diabetes」オンライン版に発表された。
Elovl6 deficiency improves glycemic control in diabetic db/db mice by expanding β-cell mass and increasing insulin secretory capacity(Diabetes 2017年5月1日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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