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2017年06月23日

次の診療で足を見てもらおう 「PAD」(末梢動脈性疾患)にご注意

 足などの動脈硬化によって血液の流れが悪くなる「PAD」(末梢動脈性疾患)は、進行すると足の壊死を引き起こす深刻な疾患だ。現状ではその診断と治療が十分に行われていないという調査結果が発表された。
「PAD」(末梢動脈性疾患)をご存知ですか?
 「PAD」(末梢動脈性疾患)は、足などの動脈が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりして、血液の流れが悪くなることでひき起こされるさまざまな症状をさす。

 糖尿病合併症について、網膜症や腎症、神経障害、虚血性心疾患や脳血管障害などを思い浮かべる人が多いが、PADも糖尿病の重大な合併症だ。

 糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病があると、動脈の内側(内腔)にコレステロールがたまったり、血管に負担がかかり、動脈硬化が進みやすくなる。血管の内部が狭くなることで血液の流れが悪くなり、臓器や筋肉などが酸素不足や栄養障害を起こすようになる。動脈硬化症は全身のどこの動脈でも起こる可能性があり、足も例外ではない。

 「PAD」を放置していると、足などにしびれや痛みが起こり、悪化すると潰瘍ができたり、ひどい場合には壊死することもある。また、PADは足の症状を示すものだが、動脈硬化は足に限らず体中の血管に及んでいる可能性がある。全身の病気ととらえ、管理していくことが必要になる。
足に異変が起きたら治療が必要 早期の発見が予後を決める
 現在、PADに対しては薬物療法や運動療法、手術など、病状の進行や治療目標に応じたさまざまな治療法がある。早期に発見し適切に治療することで、元気な生活をおくっている患者も多い。

 PADの病期としては、ます冷感やしびれが起こり、やがて「間欠性跛行」(しばらく歩くと痛みが出る、休むとまた歩ける、という症状)があらわれ、それが進行すると安静時にも疼痛が起こるようになる。

 この病態を早期に発見するために有用なのは、手足の血圧を一度に測って比べる、ABI(足関節上腕血圧比)という検査だ。健康な人では、足と腕の血圧とはほぼ同じだが、下肢の動脈に狭窄や閉塞があると足の血圧が下がる。この検査は簡単に行え、苦痛もない。ABI検査を受けたことのない人は、主治医に尋ねてみよう。
米国心臓病学会(AHA)はPADの早期発見を呼び掛けている
たばこ、高血圧、高コレステロール、糖尿病が最大のリスク
 米国のハーバード大学の研究によると、PADの危険性を高める4つの要因は、▽喫煙、▽高血圧、▽高コレステロール血症、▽2型糖尿病だ。米国では800~1,000万人の患者がPADを発症しており、現状ではその診断と治療が十分に行われていないという。

 PADを引き起こすのは、「アテローム性動脈硬化症」が原因で、足の太い動脈に狭窄や閉塞が起こることだ。この動脈硬化では、動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなるドロドロした粥状物質がたまってアテローム(粥状硬化)ができ、次第に肥厚することで動脈の内腔が狭くなる。

 研究チームは、心血管疾患の既往歴がない4万4,985人の男女を対象に、心血管疾患の危険因子とPADの関係性を、24年間にわたり追跡して調査した。期間中に537例がアテローム性動脈硬化症が進行し、PADと診断された。

 解析した結果、「喫煙」「高血圧」「高コレステロール血症」「2型糖尿病」という危険因子をもつ人は、そうでない人に比べPADを発症する危険性が高く、それぞれの危険因子が1つ増えるごとにPADの発症リスクは約2倍に高まることが判明した。また、PADを発症した患者の96%は診断をされたときに、4種類の危険因子のうち少なくとも1つをもっていることが判明した。

 2型糖尿病と高コレステロール血症を発症している患者でPADの危険性は特に大きかった。また、高血圧を発症し降圧薬を服用している患者でPADのリスクは大きかった。PADの発症を防ぐために、PADの危険因子に対し十分な対策することが重要だと、研究者は指摘している。
果物や野菜を積極的に摂取するとPADリスクが低減
 PADの発症リスクを低減する条件も明らかになっている。ニューヨーク大学の研究によると、野菜と果物を1日に3サービング以上食べると、PADを予防できる可能性がある。1サービングの野菜はボウル1カップに相当し、3サービングの野菜はおよそ350gに相当する。それを1日3食の食事で毎回食べると良いという。

 研究チームは、米国の2万ヵ所以上で平均年齢64歳の男女370万人を対象に調査した。食事スタイルなどについてアンケート調査を行い、ABI検査を行った。その結果、参加者の6.3%がPADの疑いがあることが判明した。

 解析したところ、野菜と果物を毎日3回以上食べている人は、食べていない人に比べ、PADが18%少ないことが判明した。毎日の食事で3回以上果物や野菜食べているのは、全体の29.2%だったという。

 「食事に野菜と果物を加えるというシンプルな方法で、PDAを発症するリスクのある人に、大きな影響をもたらすことが明らかになりました。野菜と果物をより多く食べることの重要さがあらためて示されたのです。PAD患者への個別の食事指導やカウンセリングも重要です」と、ニューヨーク大学医学部の外科教授であるジェフリー バーガー氏は述べている。

「PAD」(末梢動脈性疾患)(米国糖尿病学会 2014年9月24日)
Associations between Conventional Cardiovascular Risk Factors and Risk of Peripheral Artery Disease in Men(JAMA 2013年8月5日)
Eating more fruits and vegetables may lower risk of blockages in leg arteries(米国心臓学会 2017年5月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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