資料室

facebook
メールマガジン
糖尿病3分間ラーニング
「褐色脂肪」を活性化する因子を特定 エネルギー消費を促す治療
2017年08月25日
カテゴリー: 医療の進歩 運動療法 

 エネルギーを燃焼させることから肥満症の新たな治療になると期待されている「褐色脂肪細胞」の遺伝子プログラムの活性化する新たな因子「NFIA」を、東京大学医学部附属病院などの研究チームが特定した。
 NFIAをコントロールし「褐色脂肪組織」を活性化することで、「エネルギー消費の促進」にもとづく2型糖尿病やメタボリックシンドロームの新たな治療法を開発できる可能性がある。

 研究は、東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科の門脇孝教授、山内敏正准教授、脇裕典特任准教授、平池勇雄特任研究員および東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野の油谷浩幸教授、堤修一特任准教授らの研究グループによるもの。
「褐色脂肪細胞」を高める新しい治療法
 肥満症とそれに起因するメタボリックシンドロームや肥満を伴う2型糖尿病は、心血管疾患、腎疾患やがんのリスクを高める。

 「褐色脂肪細胞」の数や働きを高めることが肥満症の新しい治療法につながると期待されている。

 体にある脂肪細胞は大きく「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」に分かれる。白色脂肪細胞は皮下や内臓にあり、体内の余分なエネルギーを脂肪として蓄積する。一方、褐色脂肪細胞は脂肪を燃焼し熱を産生する働きを担っている。

 白色脂肪細胞はエネルギーをためこむ細胞だが、褐色脂肪細胞は逆にエネルギーを燃焼させる細胞だ。

 最近の研究で、熱産生を介してエネルギーを消費する褐色脂肪組織はヒトの成人にもあることが分かってきた。

 BMI(体格指数)と褐色脂肪組織の活性が負に相関すること、また加齢に伴い褐色脂肪組織の活性が低下することも報告されている。

 褐色脂肪組織の数や働きを高めることが肥満症の新しい治療法につながると期待されている。

DNA上のオープンクロマチン領域を解析
 ヒトを含む多細胞生物は、同一のDNAを有するにも関わらず形態や機能が異なるさまざまな細胞の集団として成り立っている。

 DNAは通常「ヒストン」と呼ばれるタンパク質に巻き付いた状態であり、ヒストンとDNAの複合体は「クロマチン」と呼ばれる。

 同一のDNAをもつにも関わらず全身のさまざまな細胞がそれぞれ異なる機能を発揮できるのは、DNAの異なる部分から情報を読み出しているためだ。DNAのうち、情報として読み出される部分が「遺伝子」であり、読み出す現象は「転写」と呼ばれる。

 DNAから情報を読み出す際、DNAはヒストンからほどけて、遺伝子の転写に必要な因子の結合を許すような「オープンクロマチン」構造を取ることが知られている。
NFIAを導入すると褐色脂肪が活性化
 研究チームはまず、マウスの褐色・白色脂肪組織で、オープンクロマチン領域を濃縮する「FAIRE-seq」と呼ばれる手法を行った。

 その結果、褐色脂肪組織に特異的なオープンクロマチン領域には、「NFIA」という転写因子の結合配列が強く濃縮していることが判明。

 次に研究チームは、転写因子とDNAの結合を網羅的に解析する「ChIP-seq」と呼ばれる手法により、NFIAが褐色脂肪組織のオープンクロマチン領域へ結合し情報の読み出しを促進することで、褐色脂肪の遺伝子プログラムを活性化していることを明らかにした。

 また、脂肪細胞ではこれまでに、核内受容体のひとつである「PPARγ」と呼ばれる転写因子がその分化に必要十分であると知られており、脂肪細胞分化の「マスター転写因子」と考えられていた。

 研究チームは、NFIAがPPARγに先行してDNAへ結合し、かつPPARγのDNAへの結合を促進することで、NFIAとPPARγが協調的に褐色脂肪の遺伝子プログラムを活性化することを発見した。

 これにより、褐色脂肪特異的の遺伝子プログラムの活性化はPPARγのみでは達成できず、NFIAの存在が必須であることが明らかになった。
「エネルギー消費の促進」を引き出す治療法へ
 NFIAを欠損させたマウスでは、熱産生を担うUCP1のみならず褐色脂肪の遺伝子プログラム全体が著しく障害されており、反対に骨格筋の遺伝子プログラムは活性化されていた。

 一方で、NFIAを導入すると筋芽細胞や白色脂肪細胞で褐色脂肪の遺伝子プログラムが活性化された。

 さらに、ヒト成人の褐色脂肪組織でも白色脂肪組織と比較してNFIA遺伝子が高い割合で発現しており、その発現は褐色脂肪に特異的な遺伝子の発現と正に相関していることが分かった。

 以上から、NFIAはクロマチンの制御を介してPPARγと協調的に褐色脂肪の遺伝子プログラムを活性化する転写因子と考えられるという。

 研究チームは「今後はNFIAの発現を欠損させたり、増やしたりしたマウスにおける体重や脂質、血糖値などを解析して肥満症、メタボリックシンドローム、肥満2型糖尿病の発症への影響について研究を進める」と述べている。

 現存する肥満症の薬物治療などはすべて「エネルギー摂取の抑制」という考え方にもとづく治療法だ。今回の研究成果は、NFIAの制御を介して褐色脂肪組織を活性化することで、「エネルギー摂取の抑制」ではなく「エネルギー消費の促進」を引き出すというもの。

 これにもとづく肥満症、メタボリックシンドローム、肥満を伴う2型糖尿病の新しい治療につながる可能性がある。

東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科
東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野
[ Terahata ]
カテゴリー :  医療の進歩  運動療法  

■最新ニュース

ニュース一覧へ ▶

※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で
表わされるようになりました。過去の記事はこの変更に未対応の部分があります。
Copyright ©1996-2017 Soshinsha. 掲載記事・図表の無断転用を禁じます。
治療や療養についてかかりつけの医師や医療スタッフにご相談ください。
全国生活習慣病予防月間2018川柳・イラスト募集
更新情報配信中!