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糖尿病3分間ラーニング
2型糖尿病は「治せる」病気? 体重コントロールで発症前に戻す
2017年09月22日

第53回欧州糖尿病学会(EASD)
 肥満のある2型糖尿病の人は、カロリーを適切に調整した食事と運動を続ければ、糖尿病が「治った」状態を維持できるという研究が発表された。
2型糖尿病に共通する病態
 英国のニューカッスル大学のロイ テイラー教授は約40年間、糖尿病について研究しており、9月にリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD 2017)で最新の研究成果を発表した。研究は、医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」に発表された。

 テイラー教授によると、2型糖尿病には共通する病態があるという。

・ 過剰なカロリー摂取により肝臓に過剰な脂肪がたまる。その結果、血糖を下げるインスリンに対する肝臓の反応が鈍くなる(インスリン抵抗性)。

・ インスリン抵抗性が起こっても、はじめのうちは膵臓のβ細胞から過剰なインスリンが分泌され、血糖値を一定に維持しようとする。しかし、やがてβ細胞は疲弊し、インスリンの分泌が悪くなり機能しなくなる。そうなると、血糖値は上昇する。

 2型糖尿病の人の多くに肥満がみられる。肝臓にたまる脂肪は、皮下脂肪、内臓脂肪に続く第3の脂肪ともいうべきもので、放置していると血糖コントロールの悪化の原因になるだけでなく、動脈硬化を招き、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす。脂肪は肝臓だけではなく、膵臓にもたまる。早い段階で発見し、治療を行うことが大切だ。
肥満を解消することが重要
 食事をコントロールし、脂肪の蓄積が減ると、膵臓でのインスリンの産生が改善する。2型糖尿病の人は、発症後10年以内なら、肥満を解消し肝臓と膵臓に蓄積した脂肪を減らすだけで、糖尿病が「治った」と同じ状態を維持できると、テイラー教授は指摘している。

 「体重をコントロールし、肥満を解消することは、患者自身にとってきわめて重要なことです。そのために必要なことは、食事の摂取カロリーを適正にコントロールすることです」と、テイラー教授は言う。

 低カロリー食をとり、余分な脂肪の蓄積を減らせれば、糖尿病を完全に治すことはできないまでも、必要な薬の種類や量を減らしたり、健康状態を悪化を防ぐことが可能になるという。

 「2型糖尿病の治療を難しく考える必要はありません。肥満のある人は、体重を減らすというシンプルな治療を行うだけでも、病状を大幅に改善できます」と、テイラー教授は指摘する。
脂肪を取り除き、2型糖尿病を逆転させる
 肝臓に脂肪が過剰に蓄積されると、インスリンへの反応が鈍くなり、膵臓でインスリンが過剰に生成されるようになる。そうなると、全身で脂肪がたまりやすくなり、膵臓では、この過剰な脂肪が原因でインスリンを産生するβ細胞の機能が損なわれる。

 脂肪肝の治療の必要性が広く説かれるようになっているが、脂肪は膵臓にもたまることにも注意を向ける必要がある。テイラー教授は、2型糖尿病では肝臓と膵臓の両方で余分な脂肪蓄積が起こるという双子サイクル仮説を提唱している。

 テイラー教授が2011年に発表した研究では、低カロリー食によってカロリー摂取量をコントロールすると、肥満が解消され、脂肪蓄積が引き起こす負のサイクルが一気に逆転しはじめることが確認された。

 2016年の研究では、2型糖尿病の患者が食事療法をはじめると、7日間で肝臓の脂肪蓄積が大幅に低下し、インスリン感受性が正常化し、空腹時血糖値も正常化することが確認された。試験を8週間続けると、膵臓にたまった脂肪も減り、インスリン分泌が改善し、血糖値はさらに安定するようになる。

 体重を約15kg減らし、高血糖の状態から離脱するのに成功した症例も報告されている。体重コントロールに成功した患者の多くで長年、血糖値は正常値の範囲に収まっているという。
負のサイクルを逆転することは可能
 「2型糖尿病のある方々にとって良いニュースは、糖尿病の既往歴が10年に及ぶ状態であっても、体にたまった余分な脂肪を減らすことで、負のサイクルを逆転することは可能であることです。膵臓での脂肪の蓄積によってβ細胞の機能は低下しますが、脂肪を減らすことでその機能は回復することが確かめられたのです」と、テイラー教授は言う。

 過剰な脂肪の蓄積を減らすにはどうすればいいのだろうか。テイラー教授は、まずはゆっくりと体重を減らすことを勧めている。脂肪肝のある人では、半年から1年をかけて体重の7~10%を落とすと、脂肪肝は改善しやすい。体重60kgの人なら4~6kg程度の減量になる。

 体重を落としたら、その状態を維持することも重要だ。いったん過剰な脂肪の蓄積をなくして血糖コントロールが改善しても、ふたたび脂肪が増えはじめると、やがて血糖値は上昇するようになる。

 極端に食事を減らすような急激なダイエットをすると、体が飢餓状態にあると反応して、脂肪細胞や筋肉がエネルギー源を放出する。すると、筋肉が減少して代謝が落ち、体が消費するエネルギー量が落ちる。その結果、ダイエットをしているつもりでも、肝臓に脂肪がたまりやすい状況になってしまう。

 低カロリー食によってカロリー摂取量をコントロールし、時間をかけて計画的に体重を減らしていけば、リバウンドする可能性を減らすことができる。さらには、運動などを併用し筋肉を増やすようにすると効果的だ。

 運動は、1日30分程度のウォーキングが勧められる。通常のウォーキングと速足のウォーキングを交互に繰り返すと、運動の効果はアップするという。

Type 2 diabetes is a reversible condition(ニューカッスル大学 2017年9月15日)
Beating type 2 diabetes into remission(ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2017年9月13日)
第53回欧州糖尿病学会(EASD)年次総会
[ Terahata ]
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