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2017年12月22日

「社会的交流」が糖尿病対策に 孤立は糖尿病リスクを高める

 社会的なネットワークに恵まれている人は、社会から孤立している人に比べ、2型糖尿病の発症リスクが低い傾向があることが、オランダのマーストリヒト大学の調査で明らかになった。
 仕事だけでなく生活や趣味なども含めたグループ活動を活発にし、孤立を防ぎ社会的交流を促すことが、「糖尿病の予防戦略」になると研究者は指摘している。
社会的交流をもつ人は糖尿病リスクが低下
 「社会的な孤立は、2型糖尿病のリスクを高めます。調査した結果、1人暮らしの男性はとくに2型糖尿病の発症リスクが高いことが示されました。新しい友達を作る、ボランティア活動に参加する、スポーツクラブに加入する、趣味のサークルに加わるなど、社会的なネットワークを豊かにして活発に活動をすることが、糖尿病対策になります」と、マーストリヒト大学医療センターのミランダ シュラム氏は言う。

 マーストリヒト大学の研究チームは、オランダ南部に在住している40〜75歳の人を対象とした観察コホート研究である「マーストリヒト研究」に参加した2,861人の男女のデータを解析した。うち1,623人(56.7%)は血糖値が正常で、2型糖尿病有病者は111人(3.9%)、糖尿病予備群は430人(15.0%)だった。

 参加者の社会的交流と2型糖尿病の発症との関連を調べたところ、社会的な活動をするサークルやグループへの参加は、糖尿病リスクを下げるために有益であることが明らかになった。研究は学術誌「BMC Public Health」に発表された。

 研究では、社会的交流をもつ人では、2型糖尿病の発症するリスクが5〜12%低下することが示された。とりわけ歩いていける距離に他者と交流できるネットワークをもっている人では、2型糖尿病のリスクは9〜21%低下した。

 こうした社会的交流への参加が乏しいと、女性では糖尿病予備群になる割合が60%上昇し、2型糖尿病を発症するする割合が112%上昇した。男性では、2型糖尿病を発症するする割合が42%上昇した。

社会的な関係を失うと糖尿病リスクは上昇
 とくに単身生活をおくっている男性では、社会的交流がないと、糖尿病リスクが大きく上昇することが明らかになった。単身生活をしている人の2型糖尿病の発症リスクは、女性では変わらなかったが、男性では94%上昇した。

 「単身生活をおくる男性は、女性に比べ、食事や運動などの生活スタイルが不健康に傾きがちだと考えられます。野菜や果物の摂取量が減り、身体活動も低下するおそれがあります」と、マーストリヒト大学医療センターのステファニー ブランクーズ氏は言う。

 さらに、社会的な関係のある友人や知人を失うと、糖尿病リスクが上昇することも分かった。社会的交流の接点を失うことで、糖尿病の発症リスクは12%上昇した。

 「社会的ネットワークの規模や、関係性のタイプなども、糖尿病リスクと関連することがはじめてわかりました。社会的な交流を活発にすることで2型糖尿病を減らせる可能性があります。孤立をなくすために幅広く支援することが必要です」と、ブランクーズ氏は言う。
ネットワークが広がると社会的支援を受けやすくなる
 「ネットワークの規模が大きくなるほど、個人の生活スタイルにもたらす影響も大きくなります。ネットワークの規模が大きくなることで、家の外で社会的な活動する時間が増え、結果として必要なときに社会的支援を受けやすくなる可能性があります」。

 社会的孤立が原因で2型糖尿病の発症リスクが上昇する原因として、社会から隔離されることでストレスや不安が増し、血糖値を正常に保つのが難しくなることが考えられる。

 さらには、社会的な交流が乏しいと、活動できる範囲が制限され、座ったまま過ごす時間が増え運動不足に陥り、肥満が増えるおそれがある。

 あるいは、血糖値を調整する代謝のメカニズムがうまくいかなくなると、体に疲労感や不快感などのネガティブな反応が起きやすくなる。これが原因で社会参加が制限されるようになっている可能性もある。

 いずれにしても今回の観察研究では、社会参加と糖尿病の発症の因果関係について、メカニズムが詳しく解明されたわけではない。「より多くの研究が必要です」と研究者は述べている。

With a little help from my friends: Ending social isolation could lower diabetes risk(BMC Public Health 2017年12月18日)
Socially isolated individuals are more prone to have newly diagnosed and prevalent type 2 diabetes mellitus - the Maastricht study –(BMC Public Health 2017年12月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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