ニュース

2018年03月28日

糖尿病・肥満が「うつ病」リスクを上昇させる 日本人1万人を調査

 糖尿病や肥満の人はうつ病の発症リスクが高いという、約1万2,000人の日本人を対象とした調査結果を、国立精神・神経医療研究センターなどが発表した。
うつ病の人には糖尿病や肥満、脂質異常症が多い
 国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループは、日本人を対象とした大規模なウェブ調査により、体格指数(BMI)による分類、メタボリックシンドローム関連疾患、食生活・運動といった生活習慣とうつ病との関連について調査した。

 その結果、うつ病になったことがあると答えた人はそうでない人と比較して、2型糖尿病や肥満、脂質異常症が多く、間食や夜食の頻度が高いことが分かった。一方、朝食を食べる頻度や中等度と強度の運動をしている頻度が少ないことが明らかになった。

 体重コントロール、肥満やメタボリックシンドロームと関連する疾患の治療や予防、朝食をしっかり摂り、間食や夜食を控え、運動を心がけることが、うつ病の予防につながる可能性がある。

 これまでうつ病の治療や予防として、服薬やストレスの対処などが重要であることが指摘されているが、今回の研究により、それらに加えて栄養学的アプローチもうつ病の治療や予防において重要な役割を果たす可能性があることが明らかになった。

肥満や糖尿病がうつ病に関連
 うつ病は、気分の落ち込みや興味・関心の低下、不眠といった諸症状を呈し、休職や自殺などのリスクを高める重大な疾患だ。世界の時点有病率は4.4%で、およそ20人に1人がうつ病であるという報告がある。

 うつ病は脳の病気と考えられているが、近年、食事や運動といった生活習慣や肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病などの生活習慣病がうつ病の発症リスクと関連することが分かってきた。

 そこで研究グループは、うつ病患者と対照者を含む1万1,876人の日本人を対象とした大規模なウェブ調査な実施し、うつ病と体格、肥満、2型糖尿病などの生活習慣の関連について総合的に検討した。

 調査参加者のうち、うつ病に罹患したことがあると答えたのは1,000人で、残りの1万0,876人を比較対照群とした。
うつ病の人では糖尿病が1.48倍に上昇
 心理的ストレスレベルの簡易的な指標としては日本語版K6テスト値を用い、BMI値は身長と体重から計算、18.5未満を体重不足、18.5〜25未満を正常体格、25〜30未満を過体重、30以上を肥満とする欧米の定義を用いた。

 朝食や間食・夜食の頻度は4点評価(まれ、1〜2日/週、3〜4日/週、ほぼ毎日)によって行われ、軽度、中等度、強度運動および飲酒の頻度は、週当たりその活動に費やした日数で評価した。

 その結果、うつ病に罹患したと答えた人たち(うつ病群)とそうでない人たち(対照群)のK6テストのスコアの平均はそれぞれ14.1点と9.8点で、うつ病群は対照群と比較して、ストレス症状が強いことが分かった。

 さらに、うつ病群では対照群と比較して、BMI30以上の肥満の割合が対照者と比べ1.61倍に上昇し(95%信頼区間 1.25〜2.08)、正常体格(BMI 18.5〜25未満)の割合は0.76倍に低下した(同 0.67〜0.87)。また、BMI 18.5未満の体重不足もうつ病群に多かったという。

 メタボリックシンドローム関連疾患のうち、脂質異常症の人の割合は、うつ病群では対照群と比べて1.53倍に増えた(同 1.27〜1.84)。

 また、うつ病群では糖尿病も発症している人が1.48倍に増えた(同 1.06〜2.06)。高血圧とうつ病との間に有意な関連はみられなかった。
うつ病の人は「間食・夜食」「朝食抜き」「運動不足」が多い
 食生活習慣ついては、うつ病患者では、間食・夜食の頻度が有意に高く、朝食の頻度が有意に低くなった。

 うつ病群ででは、朝食をほぼ毎日食べる人の割合は、食べることがまれであると答えた人に比べ0.65倍と少なかった(同 0.54〜0.77)。

 反対に、間食や夜食をほぼ毎日食べる人は、まれにしか食べない人に比べ1.43倍と多かった(同 1.20〜1.70)。

 また、運動については、中等度の運動をしている人の割合は0.82倍(同 0.72〜0.94)、強度の運動をしている人では0.78倍(同 0.68〜0.90)と、有意に少なかった。

 うつ病患者では、ストレスによる食欲低下によって「やせ」となる群とストレス太りを示す群の両極があると考えられる。
生活習慣の改善がうつ病の病状改善につながる
 今回の調査で、うつ病患者のメンタルヘルスで、朝食や適度な運動が重要であり、余分な食事やそれに伴う肥満は有害である可能性が示された。

 「体重コントロール、メタボリックシンドロームや肥満への対処、生活習慣の改善がうつ病の病状改善につながる可能性があります。今後は、うつ病と関連する潜在的なリスク因子について、前向き研究で調査することが期待されます」と、研究者は述べている。

 研究は、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第三部の功刀浩部長および秀瀬真輔氏、ジーンクエストの齋藤憲司氏らの研究グループによるもので、医学誌「Journal of Psychiatric Research」に発表された。

国立精神・神経医療研究センター
Association of depression with body mass index classification, metabolic disease, and lifestyle: a web-based survey involving 11,876 Japanese people(Journal of Psychiatric Research 2018年3月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲