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16DCCT/EDICの結果は?
2006年11月
 DCCT研究(Diabetes Control and Complications Trial)のことはもうみなさんご存知のことと思います。簡単に述べますと、良好な血糖コントロールをすれば糖尿病性合併症の発症や増悪が抑制されるかという疑問(「抑制される」と仮説する)に対して、1型糖尿病の患者さん(アメリカ1440名ほど)の協力のもとに、この仮説が正しいかどうかをおおよそ9年かけて検証した研究です。
 結果は正しいということでした。

 良好な血糖コントロールを続ければ合併症の発症および増悪が抑制できるということです。
 今では当たり前のことですが、この結果が発表された1993年以前には、科学的な調査によってこれを検証したものはなかったのです。良好な血糖コントロールの患者さんは合併症になりにくいようだと思われていましたが、誰もが疑う余地のないくらいに検証されたDCCT研究の結果によって、はじめて明らかにされました。
DCCT研究
 さて、DCCT研究では以前に臨床試験のことで書きましたように、患者さんを2つの群(この場合、「良好な血糖コントロールを推し進める群」と「これまで通りの血糖コントロール群」の2群)に分かれて長期間(約9年)の合併症の発症程度を見たわけです。以前に臨床試験のところで書きました無作為に2つの群にわける方法で行われました。
DCCT/EDIC研究
 DCCT研究終了後、「これまで通りの血糖コントロール群」の皆さんに希望を募って「良好な血糖コントロールを推し進める群」に入ってもらって、両群とも、「良好な血糖コントロールを推し進める群」になって、その後の合併症発症がどうなっていくかを調査する研究がまた始まりました。これがDCCT/EDIC研究です。
 DCCT時代の9年間の「これまで通りの血糖コントロール群」の平均HbA1cは9%、「良好な血糖コントロールを推し進める群」は平均7%でした。
 DCCT/EDICになってから、両群とも(つまり全員)頻回注射などになって「良好な血糖コントロールを推し進める群」になったわけです。4年経過、7年経過、最近は11年経過した時点のHbA1cが報告されていますが、2群間の違いはなく、HbA1cの平均は8%です。
 つまり、DCCT時代の「良好な血糖コントロールを推し進める群」はDCCT時代の9年間のHbA1c7%からDCCT/EDICの11年間は8%で、同様にDCCT時代の「これまでの血糖コントロール群」はHbA1c9%から8%に下がったまま推移してしたわけです。

糖尿病合併症の発症は?
 さて、糖尿病合併症はどうなりましたでしょうか。DCCT時代の「これまでの血糖コントロール群」は、HbA1cは良好になって8%になっているのですが、糖尿病網膜症も糖尿病腎症もそして大血管合併症(心筋梗塞、脳卒中など)、どれを調べても、DCCT時代の「良好な血糖コントロールを推し進める群」より有意に糖尿病合併症を発症しているがわかりました。
メタボリックメモリー
 これは、「あたかも過去9年間の良好な血糖コントロールの影響がその後も、少なくとも11年は続いている」という解釈になります。今後も次々と結果がでるでしょうから、何年この影響が続くのか、そのうちはっきりするでしょう。しかしながら、少なくとも11年は続いているということですね。これを「メタボリックメモリー」と呼ぶ研究者もいます。まさしく、体が過去の良好な血糖コントロールを記憶しているかのようです。
付記  糖尿病は日本でも海外でも著しい患者数の増加を見せています。数年前から糖尿病対策推進会議(厚生労働省の支援で、日本医師会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会が中心)が糖尿病の一次予防、治療体制の充実に力をいれています。
 また、今年から全国を対象にする大規模臨床研究として、2型糖尿病に対する「糖尿病予防のための戦略研究(DOIT1、DOIT2、DOIT3)」{(財)国際協力医学研究振興財団、厚労省}と「早期糖尿病の進展抑制に関する無作為化比較試験」{日本糖尿病進展抑制研究会(JEDIS)、(財)糖尿病財団}がはじまりました。どの研究でも質の高い積極的な治療や生活管理が行われます。
 そして、これらの研究成果は、日本の糖尿病治療の新たな展開をもたらすものと期待されています。
 もし、あなたがどれかの研究に該当するので参加していただけませんか?といわれたら、担当の先生に疑問や不安な点をよくお聞きした上で、積極的に参加されることを希望します。

©2006 内潟安子


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