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17インスリン注射によって“も”引き起こされるメタボリックシンドローム?
内潟安子  東京女子医科大学 糖尿病センター教授
2006年12月
メタボリックシンドローム
 メタボリックシンドロームという言葉を最近よく耳にします。先日は有名なタレントが司会しているラジオ番組でも取り上げていました。「メタボ」という愛称をつけて呼んでいました(笑)。
 肥満に加えて、高血圧、高脂血症、高血糖値(軽度であっても)のどれか2つをもつときメタボリックシンドロームと呼ぶことになりました。なぜなら血糖値以外にもこれらの値が高いまま続くと、将来心筋梗塞や脳梗塞などになりやすいことがわかってきたからです。
 メタボリックシンドローム治療の第1は「まず、痩せましょう」と、いま厚生労働省もやっきになっている病態です。
インスリン抵抗性
 肥満、血圧、血清脂質(コレステロールや中性脂肪など)、血糖の間には緊密な関係があり、「肥満してくると、血圧もあがり、血清脂質や血糖値も上昇してくる」と考えられています。つまり、この4つの土壌、根っこは同じところではないか、という考えです。
 これは「インスリン抵抗性がある」と表現することもできます。「体内に十分な自前のインスリンが存在するのですが、このインスリンの血糖を下げる力が弱くなる」、言いかえれば、「インスリンが効くべき大事な臓器つまり筋肉、脂肪組織や肝臓が、インスリンの効きにくい状態になっている」と言えます。
 インスリンの効きを悪くするホルモン様物質が脂肪組織から分泌されていることも最近知られてきました。
節約遺伝子
 「インスリンが効きにくい体」、これは大昔、食べ物がない時代を乗り越えてきた人類の宿命といえるものかもしれません。食べ物がほとんどないがゆえにわずかの食べ物摂取から十分なエネルギーを得ることができるように、「節約(倹約とかいいます)遺伝子」を我々の祖先がもつようになったと考えられています。この遺伝子をたくさんもっている人類が長生きできて繁栄してきたとも言われています。
 2型糖尿病の糖尿病体質をもつということはこの「節約遺伝子を多くもっている」ことと同じと考えていいですね。現代の人類は多かれ少なかれこの遺伝子を祖先からもらってきたことになります。
動脈硬化
 メタボリックシンドロームの定義やこの病態をどのように考えるかについては、まだまだ議論のあるところで、国際的にも統一した見解がない状態です。しかし、ちょっと小太りで、血圧もちょっと高めで血糖値もちょっと高めというお父さんに、タバコの習慣があるとやはりいままで説明したような病態が心配になります。言ってみれば、早く動脈が硬化するということです。
 もちろん年を取るということは、なにをかくそう動脈が硬化することでありますので、だれでも最後は動脈硬化を起こしてくるのですが、自分が年相応の動脈硬化の状態なら、まあよろしいと考えていいでしょうね。
1型糖尿病にも肥満が
 ところで、昔と違って1型糖尿病の方は最近とても体格がよろしいですね。昔はやせている方が多かったように思います。血糖コントロールが良くても悪くても痩せ気味でした。
 1型糖尿病の食事は普通のままでいいのだ、ということが最近浸透してきたためか、最近は体格がよく、身長の伸びがよく、時には肥満じゃないの?という方も多くみかけるようになりました。肥満1型糖尿病の方などは、もしかしたら2型糖尿病でインスリン注射しているのかしら、と一見見間違えるほどです。  肥満していますと、やはり血圧が上がってきたり、コレステロールが高くなってきたり、尿酸値が高くなってきたりと、こちらのほうも心配になってきます。
 糖尿病合併症がこれらの値が高いことが原因で起こってくるのではないか、という研究者もでてきました。
時代とともに
 「1型糖尿病という病気はどんな病気か」これを1型糖尿病の概念といいます。しかしながら、1型糖尿病の概念は時代によって変わってくるように思います。
 ご両親が2型糖尿病で、自分は1型糖尿病を発症したという場合もあります。よって、インスリン抵抗性をもった1型糖尿病というのも、おかしい話しではなくなってきます。
 現に、英国の研究者は、大きく成長する子どもの方が1型糖尿病を発症しやすいのではないか、ということを言っています。これはこれからまだまだ研究していかなければならないところです。
©2006 内潟安子


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