糖尿病の医療費・保険・制度

糖尿病になったらいくらかかる?
糖尿病の医療費を試算
 糖尿病では、ほかの危険因子や合併症の有無により、患者さん1人ひとりの医療費は大きく異なりますが、医療経済研究機構の「政府管掌健康保険における医療費等に関する調査研究報告書」によると糖尿病患者一人当たりの平均的な医療費は "年間24.7万円(平成15年度:3割負担では7.4万円=月額約6,000円)"と報告されています*。薬剤や医療機器のバリエーションは年々増え、患者さんの病状や生活スタイルなどに合った療養生活を選択できるようになってきましたが、費用は組み合わせによって様々です。ここでは、主な治療法の1カ月にかかる医療費を試算してみました。また、当サイトで実施したアンケートの集計データも併せて参考にしてください。
*健診で高血糖が見つかった人の10年後の医療費は1.7倍
*「政府管掌健康保険における健診・医療費データの分析結果」医療経済研究機構

<<2018年4月薬価・診療報酬改定後の試算です>>

*試算上の条件*
  • ・開業医の先生(クリニック、診療所)を受診
  • ・成人の患者さん
  • ・通院頻度は4週間に1回(1回28日分処方)
  • ・特定疾患処方管理加算は28日以上で660円、28日以下で180円となりますが、今回は前者で計算。
  • ・自己負担率は3割
  • ・お薬は "院外処方"(通院する医療機関で薬が出される "院内処方"と、処方箋をもらい調剤薬局で薬をもらう "院外処方"の2通りがあります)
  • ・薬剤服薬歴管理指導料は、おくすり手帳持参で410円(3割負担で120円)、おくすり手帳持参なしでは530円(3割負担で160円)となりますが、今回は前者で計算。
  • ・ジェネリック医薬品への変更なし
  • ・「特定薬剤(ハイリスク薬)管理指導加算」算定


■ケース1 投薬なし(食事+運動療法のみ)の場合
 再診料
 外来管理加算
 特定疾患療養管理料
 検査料など
730円
520円
2,250円
5.400円
 
 
 
**

 
 Total 8,900円 
●月額 2,670円 8,900円×0.3(3割負担の場合)
■ケース2 経口薬療法(2種類)の場合
 <診察>
 再診料
 外来管理加算
 特定疾患療養管理料
 処方箋料
 特定疾患処方管理加算
 検査料など
730円
520円
2,250円
680円
660円
5,400円
   
   
   
   
   
**

 
 Total 10,240円 
 <薬代>
 基本調剤料
 調剤料
 薬剤服用歴管理指導料
 特定薬剤(ハイリスク薬)管理指導加算
 薬剤料(SU剤)
      (DPP-4阻害薬)
410円
1,560円
410円
100円
840円
4,760円
   


   
(アマリール1mg/1日2錠)
(ネシーナ25mg/1日1錠)

 
 Total 8,080円 
●月額 5,496円 18,320円(10,240円+8,080円)×0.3(3割負担の場合)

経口薬療法(2種類)で、合併症がある場合
高血圧治療を受けている方 +1 092円
脂質異常症治療を受けている方 +1 158円
腎症治療を受けている方 +5 106円

■ケース3 
インスリン療法(1日4回)+経口薬(1日1種類)+血糖自己測定(月60回の場合)

 <診察>
 再診料
 外来管理加算
 在宅自己注射指導管理料
 血糖自己測定指導加算
 処方箋料
 特定疾患処方管理加算
 検査料など
730円
520円
7,500円
8,300円
680円
660円
5,400円









*


**

 
Total 23,790円  
 <薬代>
 基本調剤料
 調剤料
 
 薬剤服薬歴管理指導料
 特定薬剤(ハイリスク薬)管理指導加算
 薬剤料(ビグアナイド薬)
      (インスリン)
      (インスリン)
410円 
780円 
260円 
410円 
100円 
840円 
2,940円 
2,500円 

(経口剤1種類)
(インスリン/月1回のみ)


(メトグルコ250mg/1日3錠)
(ヒューマログ注ミリオンペン/300単位×月2本)
(トレシーバ注フレックスタッチ/300単位×月1本)

 
 Total 8,240円 
●月額 9,609 円 32,030円(23,790円+8,240円)×0.3(3割負担の場合)

インスリン療法で合併症がある場合
高血圧治療を受けている方 +1326円
脂質異常症治療を受けている方 +1158円
腎症治療を受けている方 +5106円
別注:
*血糖自己測定器加算は、月20回以上の場合3,500円、月30回以上の場合4,650円、月40回以上の場合5,800円、月60回以上の場合8,300円、月90回以上の場合11,700円、月100回以上の場合13,200円、月120回以上の場合14,900円(90回以上は1型患者さんのみ)
*院外処方では1本あたり17円(月額2,040円)。

**検査料などの内訳(例)
・血糖値、HbA1c、尿検査/毎月
・一般生化学検査/3カ月に1回
・尿中微量アルブミン検査/年2回
・心電図/年2回
・胸部レントゲン検査/年1回
・紹介状/年1回
・栄養指導/年2回

●ケース1〜3で示したように、利用した分の治療費を加算算定していく診療所・クリニックも多いですが、「生活習慣病管理料*」として、諸々の治療を包括した金額が請求される方法もあります(糖尿病合併症管理料を除く)。その金額は以下のように一律で決められています。
 糖尿病を主病とした場合
 ・院外処方  8,000円(3割負担で2,400円)
 ・院内処方 12,800円(3割負担で3,840円)
包括で治療費を出すところは、この他に再診料と継続管理加算しか請求できない規定になっています。
*診療所・クリニックと200症未満病院において、患者の同意を得て治療計画を策定し、生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合に月1回に限り算定。糖尿病を主病とする場合は、在宅自己注射指導管理料を算定しているときは算定できない。血糖自己測定値に基づく指導を行った場合(2型糖尿病の患者であってインスリン製剤を使用していないものに限る)は、年1回に限り所定点数に500点(5,000円)を加算する。  
 合併症と医療費
糖尿病の進行が進むと合併症も発症しやすくなり、合併症のある人とない人では、長い目で見ると医療費に大きな差が出てきます。「健康政府管掌健康保険における医療費等に関する調査研究報告書」では、合併症数別の一人当たり年間医療費を算出しています*。本研究結果では、合併症が無い場合と比較して、合併症が1つの場合は約1.2倍、2つの場合は約1.8倍、3つの場合は約2倍、4つの場合は約2.5倍と高くなる傾向を示しています。
*「政府管掌健康保険における医療費等に関する調査研究報告書」医療経済研究機構
 下記では、ケース2・3の糖尿病治療とあわせ、合併症治療で同じクリニック・診療所のかかりつけ医に受診した際、いくらぐらいかかるのかを試算してみました。

ケース2+高血圧治療 3割負担で1カ月 1,092円
 薬剤料(ミカルディス錠40mg、アムロジン錠2,5mg)
 調剤料
 Total
3,640円 
0円 
3,640円
*ネシーナと同じ用法となるため調剤料の発生なし

ケース3+高血圧治療 3割負担で1カ月 1,326円
 薬剤料(ミカルディス錠40mg、アムロジン錠2,5mg)
 調剤料
 Total
3,640円 
780円
4,420円
ケース2・3+脂質異常症治療 3割負担で1カ月 1,158円
 薬剤料(クレストール錠5mg)
 調剤料
 Total
3,080円 
780円 
3,860円
ケース2+腎症治療 3割負担で1カ月 5,106円
 薬剤料(ペルサンチンLカプセル150mg、クレメジン細粒分包2g)
 調剤料(1剤分)
 Total
16,240円 
780円
17,020円
*アマリールと同じ用法となるためペルサンチンの調剤料なし

ケース3+腎症治療 3割負担で1カ月 5,340円
 薬剤料(ペルサンチンLカプセル150mg、クレメジン細粒分包2g)
 調剤料(1剤分)
 Total
17,020円 
780円 
17,800円
*メトグルコと同じ用法となるためクレメジンの調剤料なし

【人工透析】
 腎症が進行し、透析治療になると年間およそ400〜600万円(外来血液透析40万円/月、腹膜透析(CAPD)30〜50万円/月)の治療費がかかります。ただし、各医療保険では助成制度を設けており、手続きを行うことで10,000円(人工透析を要する70歳未満の上位所得者については20,000円)を限度とする負担額に軽減することができます。また、透析患者さんは身体障害1級に該当しますので、認定されれば身体障害者手帳が交付されます。

透析治療にかかる費用について(全国腎臓病協議会)
特定疾病に係る高額療養費支給特例について(協会けんぽ)

【目の定期検査の目安】
 再診料
 視力検査
 眼圧検査
 眼底検査
 細隙燈顕微鏡
700円 
820円 
1,680円 
1,120円 
700円 



(精密眼底検査2回×560円+眼底カメラ1回560円)
(角膜、水晶体の検査で白内障などがわかる)
 合計5,020円  
*上記は数カ月に1回程度受診の場合の1回にかかる費用例
*眼底カメラは、蛍光眼底カメラを行った場合は4,000円となる。
*網膜光凝固術:通常数回に分けて行います。回数に関係なく総計112,000円+診察料

■ジェネリック医薬品(後発医薬品)について
 先発医薬品と同等であるものとして製造販売が承認されたジェネリック医薬品は、一般的に開発費用が安く抑えられることから、先発医薬品に比べて安価に利用できます。糖尿病の治療薬でもジェネリック医薬品が出ているものがあります(先発医薬品からの変更を希望しても、対応するジェネリック医薬品が製造・販売されていないものもあります)。
 但し、有効成分、分量、用法、用量、効能・効果は同じとされていますが、添加物、大きさ、味、におい、保存性等の違いがあるものがあり、人によっては効能・効果に変化が表れる場合もありますので、切り替えには慎重を要します。詳しくは、主治医にご相談ください。

ジェネリック医薬品の検索・利用医療機関検索(日本ジェネリック医薬品学会)
ジェネリック医薬品の「かんたん差額計算」(日本ジェネリック製薬協会)

【関連情報】
平成30年度診療報酬改定について(厚生労働省)
診療報酬改定2018「透析予防」に重点(糖尿病情報BOX&Net.No.56 2018年4月1日発行号)
日本の糖尿病の医療費は8兆円 世界第7位の糖尿病大国に(2015年11月)
インスリン療法と医療費に関するアンケート調査結果(2013年6月)

 協力:明治薬科大学 村田正弘 嶋野 純

2018年11月更新

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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