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2011年04月25日

糖尿病の治療中断:患者さんが通院をやめる理由は? 糖尿病ネットワーク調査

キーワード
糖尿病ネットワーク
 糖尿病患者の4割以上が「通院・治療を中断したい」と感じたことがあり、その理由は「医療費の負担」、「血糖コントロールの不良」、「時間をとれない・忙しい」が多い――糖尿病ネットワークの調査でこんな実態があきらかになった。

 調査は、糖尿病ネットワークが昨年2011年2月にメールマガジンで行ったもの。糖尿病患者・家族376人と医療スタッフ85人が回答した。
通院を中断したくなった理由は「医療費の負担」が6割
糖尿病患者が通院を中断したくなる理由

 通院・治療をやめたいと考えたことのある患者の割合は44%だった。通院を中断しないまでも「休みがちになったことがある」という患者は24%に上った。

 通院を中断したくなった理由で、もっとも多かったのは「医療費の負担」(62%)。以下は「血糖コントロールがうまくいかない」(40%)、「時間をとるのが難しい、仕事を休めない」(26%)、「主治医・医療スタッフとの相性」(25%)、「診察の待ち時間が長い」(22%)が続いた。

 糖尿病の治療中断には、血糖コントロールの悪化や、糖尿病合併症の進展など、多くの危険性がともなう。患者の87%はそのことを「知っている」と回答した。

 自由回答では次のような意見が寄せられた――

  • 現在の通院先にはマイカーで通っているが、高齢になり運転が難しくなってきた。近所の医院に変えたいのだが、主治医には言いにくい。
  • 治療が必要であることを理解しているが、糖尿病の新薬の負担額が高く、後発薬が少ないのはつらい。糖尿病以外の高血圧などの治療薬の処方では、安い後発薬に変えてもらいたいというのが本音。
  • 合併症の症状が出てきたときに絶望感や孤独感を強く感じた。看護師さんのおかげで最悪の状態にならずに済み、治療も中断しなかった。あの看護師さんがいなかったらと思うとこわい。患者の精神面へのフォローは重要と感じている。
  • 1型糖尿病は治療が長期間にわたり、医療費の負担も高額となるので、今後のことを考えると不安になる。社会保障を充実し、医療費の負担を軽減してほしい。
  • 国民健康保険料と国民年金料を負担しながら治療を続けるのはつらい。
  • 現在、診療してもらっている病院では、主治医・看護師が患者1人ひとりに合わせて指導してくれているのを理解している。以前、通院していたところは、医者・看護師の意見の押し付けが多く、患者の要望を聞いてもらえなかったと感じている。
医療スタッフ「患者とのコミュニケーションが課題」
 医療スタッフが、糖尿病患者が治療を中断する理由として、もっとも多く回答したのは「時間をとるのが難しい、仕事を休めない」(88%)だった。次いで「医療費の負担」(69%)、「治療をやめても変わらない」(65%)、「予約日をキャンセルして行きづらくなった」(45%)と続いた。

 また治療を中断する患者は、性別では「男性」に多く(男性71%、女性11%)、「30代以上の働き盛り世代」に多い(84%)と指摘している。生活環境では「一人暮らし・独身」(64%)、治療内容では「食事・運動療法のみ」(54%)と比較的軽症の患者で多いと感じている(全て複数回答)。

 医療スタッフの自由回答では次のような意見が寄せられた――

  • 経済的な理由で受診が困難になる患者さんは増えていると感じている。
  • 患者さんは基本的には通院に対する意欲をもっている。医療費、家族、通院手段など、外的要因のために通院を中断される患者さんが比較的多い。
  • 相談室では糖尿病療養だけでなく、治療継続の妨げになる事由を聞く必要もある。
  • 男性の患者さんでは家族が協力的かどうかも通院状況に大きく影響するとみている。
  • 経済的に困窮している人も少なくないので、個々の患者さんの経済面も考慮した医療を提供する必要もある。
  • 治療中断による将来的な医療費の増大や合併症の進行について、患者さんに十分に理解してもらうことが大切。
  • 治療継続が困難となった場合に、医療スタッフに気軽に相談できるよう、糖尿病教室の実施などを含め、良好なコミュニケーションを築いておくと良い。

ネットワークアンケート「糖尿病治療の中断」
2011年2月に実施[回答数:医療スタッフ85名(医師11、看護師33、准看護師2、管理栄養士19、栄養士1、臨床検査技師8、理学療法士1、薬剤師6、その他4。うち健康運動指導士1、日本糖尿病療養指導士31)、患者さんやその家族376名(病態/1型糖尿病144、 2型糖尿病215、糖尿病境界型12、その他4、通院する医療機関/大学病院 57、国公立病院 28、糖尿病専門の診療所109、一般の診療所63、その他5)]
糖尿病情報BOX&Net. No.28

 ネットワークアンケートにご回答いただいた方お1人(1件)につき50円を、途上国の糖尿病患者さんを支援する活動をしている国際糖尿病支援基金に、糖尿病ネットワークより寄付いたします。現在までに4万4350円を寄付いたしました。*
第28回アンケートでの寄附は次の通りです:
  医療スタッフ85名+患者さん376名=461名
  461×50円=23,050円

 次回のネットワークアンケートは2011年5月上旬を予定しています。ぜひご協力のほど、お願いいたします。

* 2011年4月現在までの累計、第27回アンケートより開始

関連情報
通院で感じる不便・不満 42%が「相談したことがある」 糖尿病ネットワーク調査(2011年2月)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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