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2011年08月26日

魚をよく食べると糖尿病リスクが低下 インスリン抵抗性が改善

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食事療法
 「魚を多く食べる男性ほど、糖尿病の発症リスクは低下する」ことが、国立がん研究センター、国立国際医療研究センターなどが実施している多目的コホート研究(JPHC研究)であきらかになった。魚をよく食べる男性は、あまり食べない男性に比べ、糖尿病になる危険性が3割低くなるという。アジやイワシ、サンマなど脂が豊富な魚ほどリスクが低下することもわかった。
魚には良質な脂肪酸が豊富に含まれる
 魚には、心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患を予防する効果があるとされる良質な脂肪酸が豊富に含まれる。魚に含まれるのは、n-3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)。n-3系脂肪酸をとることで、インスリン分泌やインスリン抵抗性も改善するという研究報告もあり、魚を食べることで糖尿病のリスクを下げる効果を期待できる。

 調査は1990と93年に岩手、秋田、茨城、東京、新潟、長野、大阪、高知、長崎、沖縄の10都府県に住んでいた40〜75歳の男女5万2680人(男性2万2921人、女性2万9759人)が参加し行われた。参加者は調査時に糖尿病やがん、循環器疾患を発症していなかった。

 研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果をもとに魚介類の摂取量により4つのグループに分類し、糖尿病発症との関連を調べた。

 国立国際医療研究センター、国立がん研究センターなどの研究チームは、魚介類の摂取量により4つのグループに分類した。魚介類の摂取量(中央値)は、もっとも多いグループは男性 172g、女性 163g。もっとも少ないグループは男性 37g、女性 35gだった。

 調理する前の魚の1切あたりの重量は、サバが40g、サケが90gくらいになる。1尾あたりではサンマが90g、アジが60g、イワシが40g程度(いずれも頭、骨、内臓をぬいた場合)。

 5年間の追跡期間中に971人(男性572人、女性399人)が糖尿病を発症した。糖尿病の発症は、研究開始10年後に行ったアンケート調査で、期間内に糖尿病と診断されたことがある場合とした。

魚介類の摂取が多いほど糖尿病リスクが低下
魚介類摂取と糖尿病発症のリスク
出典:多目的コホート研究「JPHC Study」
 糖尿病の発症と魚類の摂取の関連を調べた結果、男性では魚介類摂取が多いほど糖尿病発症のリスクが低下する傾向がみられ、摂取量がもっとも多い群では、もっとも少ない群に比べ糖尿病のリスクが約3割低下していた。女性では魚類の摂取にかかわらず糖尿病の発症に差はなかった。

 調査結果を魚の種類ごとに分析したところ、糖尿病リスクの低下と関連が深いのは、アジ、イワシ、サンマ、サバ、ウナギなどの小・中型魚であることがわかった。また、魚を脂の量で分けたところ、脂の豊富なサケ、マス、アジ、イワシ、サンマ、サバ、ウナギ、タイ類などで糖尿病のリスクが低下することもわかった。

 一方、魚以外のいか、たこ、えび、貝類などの魚介類や、塩魚・干物、水産加工品では、糖尿病リスクを低下させる効果はみられなかった。

 研究チームは「魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸やビタミンDには、インスリン感受性やインスリン分泌を改善する効果があると考えらる」と述べている。日本人は世界的にみて魚をよく食べているが、欧米では魚のフライ(揚げ物)が好まれる地域もあり、魚の摂取と糖尿病予防は必ずしも結びつかないという。

 「日本と欧米では、摂取する魚の種類や調理法が異なることが、研究結果の違いの理由のひとつとして考えられる。さらに調べる必要がある。女性で関連がみられなかった点については、女性は体脂肪が多く脂溶性の環境汚染物質の影響を受けやすい可能性が考えられる」としている。

多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部
魚介類摂取と糖尿病との関連について

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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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