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2012年02月21日

2型糖尿病の原因遺伝子を解明 日本人の肥満に影響

 日本や韓国、中国など東アジアの人に特有な肥満関連遺伝子を5個発見したと、理化学研究所などの国際研究チームが発表した。このうち2個は日本人で肥満との強い関連が示され、糖尿病や心筋梗塞などを招く肥満の遺伝要因解明に役立つと期待される。
肥満と2型糖尿病に関わる原因遺伝子「CDKAL1」
 肥満は2型糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病の要因となる。日本人を含む東アジア人は、欧米人に比べ軽度の肥満でも糖尿病などの生活習慣病にかかりやすいことが知られおり、その原因は謎だ。これら疾患予防の面から肥満のメカニズム解明が課題となっている。

 遺伝的な原因から肥満になるケースも多く、現在までに数十個の肥満の関連遺伝子がみつかっている。しかし、そのほとんどは欧米人集団を対象とした研究の成果であり、東アジア人特有の肥満の原因遺伝子はよく分かっていない。

 研究は、文部科学省が推進する「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」の一環として行われた。研究チームが実施した調査研究は、日本人集団2万6,620人を対象に、ヒトゲノム全体に分布する約220万個の一塩基多型(SNP)とBMIの値との関連を調べるという、これまでにない大規模なものとなった。

 ヒトの遺伝子情報(ゲノム)は、約30億の塩基対から構成されるが、個々人でわずかな違いがある。その塩基配列の違いのうち0.1%程度の頻度で認められるのが遺伝子多型で、そのうち一塩基だけ異なっているのが一塩基多型(SNP)。遺伝子多型の一部は病気のかかりやすさなどに影響し、遺伝的な個人差を知る手がかりとなる。

 研究チームは、中国、シンガポール、台湾、韓国、日本の施設から集めた東アジア人集団2万7,715人を対象にした同様の解析結果と比べ、BMIの個人差に関わる東アジア人特異的な5個の新規遺伝子(PCSK1、CDKAL1、KLF9、PAX6、GP2)を特定した。

 肥満は2型糖尿病のリスクを上昇させる。同定した遺伝子の1つ「CDKAL1」遺伝子は、2型糖尿病の原因遺伝子として知られている。日本人を対象とした解析では、CDKAL1遺伝子上のSNPが肥満リスクを上昇させる一方で、2型糖尿病のリスクを減少させることを突き止めた。

 また、脂肪細胞の代謝に関連する遺伝子のひとつとして知られる「KLF9」遺伝子が、体の大きさの決定に関与する「GDF8(MSTN)」遺伝子と相互作用して、BMIの個人差に関与することをあきらかにした。

 今回の研究は、肥満と2型糖尿病の関係をさぐる上で重大な発見となる。「東アジア人集団における肥満のメカニズム解明につながるとともに、個々人にあわせたオーダーメイド医療に結びつく研究だ」と研究者らは述べている。

東アジア人集団の肥満の個人差を左右する遺伝子を同定(理化学研究所 平成24年2月20日)

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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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