糖尿病合併症 海外の調査・統計
世界の3人に1人が肥満か過体重
「世界の疾病負担研究」(GBD)のデータ

 1980~2015年に195の国と地域を対象に行われた今回の研究は、133ヵ国の2,300人以上の研究者が参加して行われている「世界の疾病負担研究」(GBD)のデータにもとづいており、世界人口のおよそ3分の1に相当する22億人の成人と小児で、肥満や過体重に関連する健康上の障害が起こるおそれがあり、死亡率も高まっていることが明らかになった。

過体重の成人や子どもの数は22億人

 BMI(肥満指数)が25以上の過体重の成人や子どもの数は、全世界で2015年の時点で約22億人、全人口の30%を占めており、全世界のBMIが30以上の肥満の人口は、小児で1億770万人、成人で6億370万人に上る。そして、2015年には、肥満が関連する疾患により400万人が死亡し、全死因の7.1%を占めている。

 成人の肥満人口が最も多いのは米国で7,940万人、次いで中国が5,730万人に上る。一方、小児の肥満人口は、中国で1,530万人、インドで1,440万人に上る。

●詳細はこちら→世界の3人に1人が肥満か過体重 22億人の成人と子どもが太り過ぎ

世界の肥満人口は6億4100万人、10年後は5人に1人が肥満
Lancet Vol. 387, No. 10026, p1377–1396, 2016

 世界の186ヵ国を対象とした、肥満度をはかるためのBMI(体格指数)の最新の調査によると、世界の肥満人口は6億4,100万人(男性 2億6,600万人、女性 3億7,500万人)に増加した。

 英国のインペリアル カレッジ ロンドンと世界保健機関(WHO)の研究チームが、世界の700人以上の研究者の協力を得て、1,698件の調査研究を解析。

 世界の肥満人口は1975年から40年間に急速に増えており、肥満人口は6億4,100万人(男性 2億6,600万人、女性 3億7,500万人)に達した。

 肥満の割合は、男性は3倍以上の11%に、女性は2倍以上の15%に上昇した。

●詳細はこちら→世界の肥満人口は6億4100万人に増加 10年後は5人に1人が肥満に

糖尿病合併症が20年間で大幅減少 心筋梗塞や高血糖は60%以上減
米国疾病予防管理センター(CDC)

 この調査は、米国疾病予防管理センター(CDC)から研究助成を得て行われたもので、医学誌「ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン」に4月17日付けで発表された。

 研究チームは、「米国医療聞取り調査」(National Health Interview Survey)、「全米退院調査」(National Hospital Discharge Survey)、「米国腎臓データシステム」(U.S. Renal Data System)、「米国人口動態統計」(National Vital Statistics System)の4件の大規模調査のデータを用いて、1990〜2010年の糖尿病合併症の発症について調べた。

 その結果、2010年までに、以下の5つの合併症すべてにおいて、相対的な発生率が低下していることが判明した。

  • 急性心筋梗塞 マイナス67.8% (95%信頼区間[CI] -76.2〜-59.3)
  • 高血糖症による死亡 マイナス64.4% (同-68.0〜-60.9)
  • 脳卒中 マイナス52.7%
  • 下肢切断 マイナス51.4%
  • 末期腎不全 マイナス28.3% (同-34.6〜-21.6)

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糖尿病の医療費の節約志向が高まるアメリカ
米国疾病予防管理センター(CDC)が実施した2015年の国民・健康調査

 米国疾病予防管理センター(CDC)の調査によると、医療費を節約したい気持ちから、診療を受けなかったり、薬を飲まない、処方箋を薬に代えるのを避ける45~64歳の糖尿病患者が増えているという。

 糖尿病と診断された45~64歳の患者のうち、過去1年間に、医療機関での診療頻度を減らしたり、遅らせたことのある患者は18.8%に上るという。これは糖尿病ではない患者の9.6%の2倍に上る数値だ。

 薬の服用をスキップするという患者は13.2%(糖尿病ではない患者では6.4%)、受診をしなかったことのある患者は14.4%(同6.9%)、処方箋を治療薬に代えるのを避ける、つまり薬代を払えない患者は16.3%(同7.9%)に上った。

 米国糖尿病学会(ADA)は、米国の糖尿病による経済的な負担は2012年には27兆円に上ったと推定している。その内訳は、糖尿病の直接的な医療費19.5兆円と、糖尿病による経済的な損失7.6兆円になる。

●詳細はこちら→糖尿病の医療費の節約志向が高まるアメリカ 5人に1人が受診を回避

米国の糖尿病合併症に関わる医療費は年間229億ドル(2兆2900億円)、自己負担額は1600ドル(16万円)
The State of Diabetes Complications in America(AACE:米国臨床内分泌学会)
  • 米国の糖尿病合併症に関わる直接的な医療費は、2006年は229億ドル(2兆2900億円)
  • 糖尿病合併症のある2型糖尿病患者では、糖尿病のない平均的なアメリカ人に比べ、毎年の医療費がおよそ3倍に増加
  • 心筋梗塞、脳卒中、網膜症、腎症、足の障害などの糖尿病合併症の年間医療費は、患者1人あたり平均1万ドル(100万円)。患者の自己負担額はおよそ1600ドル(16万円)に上る
  • 2型糖尿病患者の5人に3人は、疾患に関連する深刻な健康上の問題の少なくともひとつを抱えている
  • 米国厚生省疾病管理・予防センター(CDC)が実施した「国民健康調査(NHIS)」では、2005年の時点で糖尿病の成人患者の40%は年間収入が3万5000ドル(350万円)未満と報告された。多くの米国人にとって、糖尿病の医療費の負担は深刻
●詳細はこちら→糖尿病合併症を抑制:米国のインスリンポンプ普及の背景
世界中で肥満者が急増し10憶人を突破
WHO:世界保健機関
 世界保健機関(WHO)によると、世界の約6人に1人にあたる10億人以上が太りすぎで、これまでは高所得の先進国で肥満や太りすぎの増加が報告されていたが、低・中所得の国でも急増しているという。このまま有効な対策を施さなければ、2015年には過体重の人は15億人に達すると予測している。

 心疾患、2型糖尿病、高血圧などの病気の発症や進展に、肥満やそれに基づく代謝異常が深く関与するとされる。WHOは肥満や太りすぎは心疾患や脳卒中などの大きな原因であり、心疾患により世界で毎年1,700万人が死亡していると警告している。

●詳細はこちら→世界の約6人に1人が太りすぎ

死因の44%は心臓病、糖尿病、肺疾患、がんなど。今後10年で約3億8,800万人が生活習慣病で亡くなると予測
Grand challenges in chronic non-communicable diseases(Nature.com)
 英国や米国、インドなどの研究者らによる研究グループは、世界の死亡原因の44%は心臓病、糖尿病、肺疾患、がんなどが原因となっており、これはすべての感染病を合わせた割合の2倍に上ると発表。今後10年で約3億8,800万人が生活習慣病で亡くなると予測している。

●詳細はこちら→3,600万人の命を生活習慣病から救おう 大いなる挑戦

米国で糖尿病合併症が増加 年間8万2,000人が下肢切断、2万4,000人が失明
National Diabetes Fact Sheet(CDC:米国疾病予防管理センター)
  • 米国の糖尿病患者の死因の65%は心疾患と脳梗塞。
  • 年間4万2,813人が糖尿病性腎症を合併し、10万人以上が治療中である。
  • 年間8万2,000人が糖尿病末梢神経障害で下肢を切断している。
  • 糖尿病網膜症で年間1万2,000人〜2万4,000人が失明している。
  • 年間13万5,000人が糖尿病合併妊娠により死産や先天異常(先天性欠損)、帝王切開を経験している。
  • 年間1万〜3万人がインフルエンザや肺炎の悪化により死亡している。

●詳細はこちら→米国の糖尿病人口は1,820万人 自己管理の「ABC」が重要

National Diabetes Fact Sheet
※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で
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