ニュース

2024年04月03日

糖尿病とともに生きる人の寿命は延びている 自分らしく長生き いますぐ取り組むべき「8つの生活スタイル」

 糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べ、寿命が短いと言われることが多い。

 しかし、医療は進歩しており、糖尿病の人も長生きできるようになってきた。日本人を対象とした調査で、糖尿病の人と一般の人との平均寿命との差は縮まっていることが明らかになった。

 食事や運動などの生活スタイルを改善し、必要な治療をきちんと受けている人は、健康スコアが高く、より適切な健康状態で生きられ、より長生きできることも示された。

 健康的な生活スタイルを8項目にまとめた「ライフ エッセンシャル 8」が提唱されている。

糖尿病の人の寿命は延びている

 糖尿病とともに生きる人は、「心臓病を発症するリスクが2~4倍高い」「脳卒中のリスクが2~4倍高い」といった話を聞いて、気持ちが落ち込んだことはないだろうか?

 確かに糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べ、寿命が短いと言われることが多い。しかし、医療は進歩しており、日本人を対象とした調査で、糖尿病の人と一般の人との平均寿命との差は縮まっていることが明らかになっている。

 日本糖尿病学会「糖尿病の死因に関する調査委員会」は、「アンケート調査による日本人糖尿病の死因-2011~2020年の10年間、68,555名での検討-」を公表した。

 それによると、日本人の糖尿病症例の平均死亡時年齢は、男性74.4歳、女性77.3歳で、前回調査と比べて男性で3.0歳、女性で2.2歳、それぞれ延命していることが示された。

 これは、日本人一般の平均寿命の伸び(男性2.0歳、女性1.4歳)よりも大きい。日本人一般の平均寿命と糖尿病症例の平均死亡時年齢の差は縮まってきている。

若くして糖尿病を発症した人の健康状態は深刻

 米国心臓学会(AHA)の発表によると、とくに若いときに2型糖尿病と診断された人は、糖尿病ではない同年齢の人に比べて、脳卒中・心臓発作・心不全を発症するリスクが高く、死亡リスクも高い。

 40歳以下で2型糖尿病と診断された人は、糖尿病のない人に比べ、心不全のリスクは4.8倍、冠状動脈性心疾患のリスクは4.3倍、心血管疾患による死亡リスクは2.7倍に、それぞれ上昇することが示された。

 これは、ヨーテボリ大学などがスウェーデン国立糖尿病登録データに登録された、2型糖尿病患者31万8,083人と、年齢や性などが一致する糖尿病のない人157万5,108人のデータを比較したもの。

生活スタイルを改善すれば健康に長生きできる

 しかし、良いニュースもある。同じくAHAの発表によると、食事や運動などの生活スタイルを改善し、必要な治療をきちんと受けている人は、心臓血管の健康スコアが高く、より適切な健康状態で生きられ、より長生きできることが示された。

 AHAは、健康的な生活スタイルを8項目にまとめた「ライフ エッセンシャル 8」を提唱している。食事や運動、体重管理など、8項目の生活スタイルが、すぐに取り組める生活改善の指南になるとしている。

 米チューレーン大学公衆衛生学部のスアン ワン氏らが、英国の成人13万6,599人を対象に実施した調査で、8項目の健康的な生活スタイルの実行度が高い人ほど、平均余命が長いことが示された。

人生の早い段階で生活改善に取り組むことが大切

 50歳の時点でもっとも健康的な生活をしている男性は、そうでない男性に比べて、平均余命が5.2年長く、女性でも平均余命は6.3年長くなった。

 「中年になって健康的な生活をしている人は、心血管の健康状態を高く維持できていることが示されました。心血管疾患だけでなく、がんや認知症など、加齢にともない増える慢性疾患を予防できている人も多いことが分かりました」と、ワン氏は言う。

 「人生の早い段階で、生活改善に取り組むことが、その後の人生を楽しみ、健康に生きられるようになるために必要です」としている。

糖尿病の治療を続けている人はより健康的

 2型糖尿病のある人を含む18万人以上を対象とした、別の大規模な調査では、食事や運動などの生活スタイルを改善し、糖尿病の治療をきちんと続けている糖尿病の人は、糖尿病のない人よりもむしろ健康的で、長生きできていることが示されている。

 「糖尿病とともに生きる人は、血糖管理を適正に行い、運動や食事などの生活スタイルを改善することで、脳卒中や冠状動脈疾患、腎臓病などの合併症のリスクを軽減できます。多くの人は、血糖降下薬による薬物療法も必要となりますが、糖尿病の医療は進歩しており、新しい治療も開発されています」と、英カーディフ大学ヒューマン データ サイエンス学部のクレイグ カリー教授は述べている。

 前述の日本の糖尿病患者を対象とした調査では、糖尿病の人の死因の第1位は「がん(悪性新生物)」で38.9%[肺がん7.8%、膵がん6.5%、肝臓がん4.1%]、第2位は「感染症」で17.0%、第3位は「血管障害」で10.9%[脳血管障害5.2%、虚血性心疾患3.5%、慢性腎不全2.3%]となっている。

すぐに取り組める生活改善 ライフ エッセンシャル 8

 米国心臓学会(AHA)は、健康的な生活スタイルを8項目にまとめた「ライフ エッセンシャル 8」を提唱している。

1 健康的な食事
 野菜や果物などの植物性食品を十分に食べ、油の少ない肉、魚、大豆など、体に悪い脂肪が少なく、良質なタンパク質の含まれる食品を食べる。塩分を控え、炭水化物は全粒穀物からとるようにする。全粒穀物は精製されていない穀物で、食物繊維などが豊富に含まれる。
2 運動と身体活動
 成人は週に150分以上のウォーキングなどの中強度の運動、あるいは筋トレなども組合わせた週に75分の活発な運動を行うことを推奨している。座ったまま過ごす時間が長引いたときは、それを中断し、立ち上がって体を動かすことも大切。
3 血糖の管理
 血糖値が高い状態が続いても、自覚症状が乏しかったり気が付かない場合があるが、長期間放置していると心臓・腎臓・目・神経・脳などに障害がでてくる。1~2ヵ月の血糖値の平均を反映するHbA1cの値が目安になる。HbA1cは、長期的な血糖コントロールの指標にもなる。糖尿病のある人は、合併症を予防するために、HbA1c 7.0%未満を維持することを目指す。
4 血圧の管理
 血圧は、最高(収縮期)血圧は120mmHg未満、最低(拡張期)血圧80mmHg未満が最適。最高血圧130~139mmHg、最低血圧80~89mmHgであると、血圧は高めで、これまで通りの生活を続けていると高血圧へと移行しやすい。血圧が高い場合は、食事や運動などの生活習慣を見直し、医師より処方された治療薬をきちんと服用する。
5 血中脂質の管理
 血中脂質(コレステロールや中性脂肪)を適正に管理することも大切。最近は、総コレステロールだけではなく、non-HDLコレステロール(総コレステロールから善玉のHDLコレステロールを引いたもの)も管理対象となっている。
6 健康的な体重
 成人では体格指数(BMI)が18.5~24.9であると、心血管の健康が良好になりやすい。肥満やメタボのある人は体重を減らすことで心血管疾患や2型糖尿病などのリスクを下げられる。低体重(やせ)にも注意が必要だ。
 体格指数(BMI)は、簡単に計算でき、広く利用できる利点があるものの、それだけでは十分ではない。内臓脂肪(へその高さで計る腰回りの大きさ)を減らすことも含めて対策する必要がある。
7 喫煙と受動喫煙の害を避ける
 これまでは、可燃式タバコのみが危険とされていたが、新たに登場した電子タバコも健康にとって有害であることが分かってきた。タバコを吸う習慣のある人は禁煙を。受動喫煙も危険なので、なるべく避けるようにする。
8 睡眠の改善
 質の良い睡眠をとることも大切。睡眠の質や時間が十分で、休息をとれていると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下することが報告されている。1日の理想的な睡眠時間は、成人では7~9時間。

ライフ エッセンシャル 8
米国心臓学会(AHA)が公開しているビデオ

一般社団法人 日本糖尿病学会

People under 40 diagnosed with type 2 diabetes face excess risk of cardiovascular disease, death (米国心臓学会 2019年4月8日)
Age at Diagnosis of Type 2 Diabetes Mellitus and Associations With Cardiovascular and Mortality Risks: Findings From the Swedish National Diabetes Registry (Circulation 2019年4月8日)
Heart-healthy lifestyle linked to a longer life, free of chronic health conditions (米国心臓学会 2023年3月2日)
Can people with type 2 diabetes live longer? (カーディフ大学 2014年8月8日)
Can people with type 2 diabetes live longer than those without? A comparison of mortality in people initiated with metformin or sulphonylurea monotherapy and matched, non-diabetic controls (Diabetes, Obesity and Metabolism 2014年7月7日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲