ネットワークアンケート

糖尿病治療におけるPHRアプリの利用と活用について

医師・医療スタッフに聞きました

血糖値、血圧、体重や治療・服薬情報などを個人で記録するためのPHR(パーソナルヘルスレコード)アプリは、患者さんの自己管理に役立ち、またデータを医療機関と共有することで、糖尿病の治療の質の向上が期待されています。しかし、スマホを使った新しい技術でもあり、高齢者には使いにくいといったことや規格が異なる様々な種類が存在していることで、有効な活用方法はまだ手探り状態といえるようです。今回は、PHRアプリの利用実態について患者さんと医療者にアンケートを実施しました。

 
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PHRアプリの導入率は高くなく、導入していない理由は「PHRアプリを知らない」が約7割

最初に、PHRアプリ導入率を調査した結果、「導入している」が14.2%と導入率はそれほど高くなく、導入していない理由は、約6割が「PHRアプリを知らない」という回答でした。そのほか、「時間や人材の不足」「患者指導が十分できない」といった教育環境が課題として挙げられました。また、患者さんに「PHRアプリの利用を勧めていますか?」と聞いてみたところ、利用できそうな患者さんに勧めているという回答が8割でした。

PHRアプリを施設として導入していますか?

Q1
  • 導入している
  • 過去に導入していた
  • 導入したことはないが、興味はある
  • 導入していない
  • 導入しているかわからない

PHRアプリを導入していない理由を教えてください。(複数回答) n=83

PHRアプリを知らない

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時間や人材の不足でデータが十分に活用できない

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患者指導が十分できない

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施設の患者層とマッチしていない

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導入にコストがかかる

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導入が手間だと感じている

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情報漏洩に不安がある

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PHRアプリの導入にメリットを感じていない

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その他

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PHRアプリの導入目的で最も多いのは「血糖管理」

次に、PHRアプリの導入目的を聞いたところ、1位は「血糖管理」、2位は「体重管理」、3位は「服薬状況の把握」でした。なお、患者さんのアンケート結果では、1位、2位は医療者と同じでしたが、3位は「食事記録」でした。また、PHRアプリを利用するメリットとして、医療者全員が「患者情報が把握しやすい」との回答で、次いで「医療者同士での患者情報の共有」「患者教育がやりやすい」「患者の治療に対するモチベーションが上がる」などが挙げられました。

どのような目的でPHRアプリを導入していますか?(複数回答) n=15

血糖値の把握

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体重の把握

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服薬状況の把握

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食事状況の把握

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家庭血圧の把握

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運動状況の把握

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患者さんとの検査値の共有

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PHRアプリを診療・療養支援で利用するメリットを教えてください。(複数回答) n=15

患者情報を把握しやすい

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医療者同士で患者情報を共有できる

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患者教育がやりやすい

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患者さんの治療に対するモチベーションが上がる

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患者さんに行動変容を促せる

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診療時間を短縮できる

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血糖管理におけるPHRアプリ利用のメリットの第1位は「血糖値の可視化」

続いて、血糖管理においてPHRアプリを利用することのメリットを聞いてみると、「血糖値が自動でグラフ化される」がトップに挙げられました。患者さんのアンケートの結果も「血糖変動が確認できる」がトップで、医療者・患者さんともに、データの視覚化にメリットを感じていることがわかりました。

血糖管理においてPHRアプリを導入するメリットを教えてください。(複数回答) n=14

血糖値が自動でグラフ化される

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患者さんの血糖値や食事・運動の状況が診察前にわかる

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血糖管理の支援がしやすい

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データ管理がしやすい

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まとめ

今回の調査では、PHRアプリは認知度や教育の問題から普及率は高くないことがわかりましたが、利用者では医療者・患者ともメリットを感じており、PHRアプリが医療者-患者関係の構築や治療向上の手段になり得ることが推測されました。なお、今回の調査はボランティアで回答していただいた読者の調査結果であり、PHRアプリの導入施設をスクリーニングした調査ではないため、糖尿病の領域全体のPHRアプリ利用実態を反映しているものではありません。

<調査概要>
実施時期:2023年 10月
調査方法:インターネット調査
対  象:「糖尿病ネットワーク」「糖尿病リソースガイド」メールマガジン会員
協  力:株式会社三和化学研究所
<回答者の属性>
医師・医療スタッフ 106 名
職  種:薬剤師24名、理学療法士1名、臨床検査技師2名、管理栄養士18名、栄養士1名、保健師1名、その他4名

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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