25. 糖尿病と感染症

2016年9月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
真山クリニック院長 真山 享 先生


糖尿病の人は感染症にかかりやすく悪化しやすい

 糖尿病の人は、肺炎や膀胱炎、腎盂炎〈じんうえん〉、皮膚炎、歯肉炎、あるいはかぜといった、感染症にかかりやすいことが知られています。また、感染症が急速に重症化することも多く、回復には時間がかかります。そして、感染症にかかると血糖値が普段以上に上昇するので、コントロールが悪化し、糖尿病そのものにも影響がでてきます。

感染症に注意が必要な5つの理由

 糖尿病の人が感染症にかかりやすく悪化しやすいのはなぜでしょう。
 人間のからだは、体内に侵入しようとするウイルスや細菌と常に戦っています。これを感染防御機構といいますが、糖尿病では次のことから、感染防御機構が容易に破綻してしまうのです。

(1) 好中球の貪食機能の低下

 好中球〈こうちゅうきゅう〉は白血球の成分のひとつで、体内にウイルスや細菌が侵入すると、それを取り囲んで食い殺します(貪食〈どんしょく〉)。血糖値が高くなると、この機能が低下します。

(2) 免疫反応の低下

 免疫反応とは、一度感染した病原体に対し、体内でそれに対する抗体が作られ、次に同じ病原体がからだに侵入しようとしたときに、それを防ぐように働く仕組みのことです。高血糖では、この免疫反応も弱くなっています。

(3) 血流が悪くなる

 高血糖では、細い血管の血液の流れが悪くなります。このような状態では、酸素や栄養が十分に行き渡らず、細胞の働きが低下したり、白血球が感染部位に到達しにくくなって、感染しやすくなります。内臓の血流も悪くなっているので、肺炎や胆のう炎、膀胱炎、腎炎など、内臓の病気も起こりやすくなります。
 さらに、感染で受けたダメージの回復にも時間がかかりますし、抗生物質などの薬物治療でも、薬が感染部位に到達しにくいため、薬の効果が弱くなります。

(4) 神経障害が感染・悪化の一因に

 糖尿病の合併症の神経障害があると、内臓の活動が乱れやすく、膀胱炎や胆のう炎の原因になります(コラム参照)。また、痛みを感じる神経も障害されるので、症状が現れにくく、感染症に気付くのが遅れ、その間に病気が進行してしまいます。

(5) 血糖値がより上昇する

 一度細菌類に感染すると、インスリンを効きにくくする物質(サイトカインなど)が多くなって、血糖値は普段よりも高くなります。このことが糖尿病の状態をより悪くしてしまい、感染症をさらに進行させてしまうという悪循環が生まれます。

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