糖尿病とは「基礎編」

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生
編集
日本医科大学客員教授
HDCアトラスクリニック 院長 鈴木吉彦先生
- 糖尿病の人口と病気の特徴
- 糖尿病の誘因
- インスリンの作用が不足し血糖値が上がります
- 糖尿病はコントロールする病気です
- 糖尿病の症状はあまりあてになりません
- 放置すると血管や神経が冒されます
- 糖尿病のタイプ
- 糖尿病と診断される時
- 糖尿病の治療
- 治療の成績を知る指標
- 糖尿病は自己管理が大切な病気です
- Q&A
糖尿病の人口と病気の特徴
厚生労働省の調査によると国内の糖尿病患者数は約890万人と推定されています(2007年国民健康・栄養調査)。ところが同じ調査で、その患者さんのうち治療を受けているのは半数程度であると報告されています。つまり、糖尿病であることに気付かないでいる人や、気付いていても治療をしないでいる人が、いかに多いかがわかります。糖尿病は自覚症状が少ないためにこのような状況となっているのですが、治療しないでいると、やがて全身にさまざまな障害を起こすのがこの病気の特徴であり、恐ろしい点です。
| 遺伝 | ![]() | ストレス |
| 食べすぎ | 飲みすぎ |
糖尿病の誘因
糖尿病は加齢のほか日常の生活習慣が誘因となって発病するので、「生活習慣病」といわれています。そして、糖尿病の患者数は年々増え続けています。その理由は、現代社会そのものが糖尿病を増やす生活習慣を生みやすいまた、これらの生活習慣にかかわる誘因とともに、糖尿病の発病には遺伝的な素因も深く関係しているため、血縁者に糖尿病の人がいる場合にはとくに注意が必要です。なお、加齢や生活習慣とは関係なく発病するタイプの糖尿病もあります(「糖尿病のタイプ」の項参照)。
インスリンの作用が不足し
血糖値が上がります
インスリンは膵〈すい〉臓で作り出されるホルモンで、細胞が血液の中からブドウ糖を取り込んでエネルギーとして利用するのを助ける働きをしています。インスリンの作用が不足すると、ブドウ糖を利用できなくなり、血液中のブドウ糖濃度「血糖値」が高くなります。これを高血糖といい、この状態が継続するのが糖尿病です。インスリンの作用不足には、膵臓のインスリンを作る出す(インスリン分泌)
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糖尿病はコントロールする病気です
糖尿病による高血糖状態は、医師の指導を受け、きちんとした治療を守れば、確実によくすることができます。しかし、インスリンの作用が不足している状態は、加齢や長年の生活習慣の結果として起きたものですから、多くの場合なかなか元に戻すことはできません。つまり、治療によって一時的に血糖値が下がっても、治療を続け生活を正していなければ、血糖値はすぐまた高くなってしまいます。血糖値を下げてできるだけ健康な人と同じくらいに保とうとすることを、「血糖をコントロールする」といいます。糖尿病の人も血糖コントロールを続けていけば、高血糖によって起こるさまざまな病気(合併症)を防ぐことができます。寿命も健康な人と変わりません。
しかし血糖コントロールを守らないと、合併症は知らず知らずのうちに進行します。そして合併症は一度発症してしまうと一般に治療は難しく、進行を抑えることが治療の主な目的となってしまいます。気付いたときにはもう取り返しのつかない状態になっていた、という患者さんは少なくありません。
一生油断は許されないという意味で、糖尿病は「治る」とか「治らない」といった
糖尿病の症状はあまりあてになりません
糖尿病の症状は気付きにくく、多少血糖値が高いくらいでは全く症状のない人がほとんどです。しかし、その程度の高血糖でも合併症は着実に発症・進行していきます。「症状がないから大丈夫」なのではなく、症状があれば血糖値はかなり高くなっているということです。高血糖がひどくなると初めて、のどが渇く、お小水が多い、トイレが近くなる、体がかゆい、できものができやすい、傷が治りにくい、足がつる、だるい、疲れやすい、物覚えが悪い、集中しない、眠い、お腹がすく、食べてもやせる、といった症状が現れてきます。さらに、血糖値がきわめて高い状態では、昏睡に陥ることがあります。
放置すると血管や神経が冒されます
自覚症状がないからと糖尿病を放置していると、高血糖は全身のさなざまな臓器を障害します。
とくに冒されやすいのは、神経と血管を中心とした臓器で、神経障害、眼球の網膜に出血する網膜症、腎臓の機神経障害
全身の神経の働きが鈍り、さまざまな症状が現れます。主な症状は、足先や手先がしびれる、麻痺した感じがする、痛い、足が冷たい・ほてる、力がぬける、勃起障害(ED)、生理が乱れてくる、閉経が早い、便秘・下痢になりやすい、たちくらみがする、額や顔に汗をかきやすい、などです。
網膜症
糖尿病による網膜症は成人後の失明の主要原因の一つで、年間約 3,000人が糖尿病により光を失っています。症状は、視力が落ちる、物がゆがんで見える、目の前にひもや点が見える、視野が欠けるなどですが、高度の視覚障害に至る直前まで症状がないことも少なくありません。
腎症
腎臓の働きが低下してくると、だるい、疲れる、足がむくむ、貧血になる、吐き気がする、息苦しいなどの症状が現れますが、これらの症状が現れたときには腎機その他
足の壊疽〈えそ〉も合併症の一つで、足を切断しなければならないこともあります。また、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞の危険性も高くなりますし、感染症にかかりやすい、虫歯・歯周病や足の水虫になりやすいなど、糖尿病は全身の至るところに影響を及ぼします。
ここまでの話を整理しましょう
なぜ糖尿病を治療するのか?・・・糖尿病であっても、健康な人と同じ寿命を全うし、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)を維持するためです。 ↓↓
それにはどうすれば良いか?・・・合併症が起きないようにする、たとえ起きたとしても、その進行を防ぐことです。 ↓↓
合併症を防ぐ方法は?・・・糖尿病をしっかりコントロールしていけば良いのです。
糖尿病のタイプ
インスリン作用不足の原因による分類
1型糖尿病膵臓のインスリンを作り出す細胞(β細胞)が破壊されてしまい、インスリン分泌がほぼゼロになってしまうタイプです。
自己免疫疾患(本来は体外からからだに侵入しようとする病原菌などを無力化するための免疫機2型糖尿病
インスリン分泌が低下はしているもののゼロではなく、いくらかは分泌されているタイプです。インスリン抵抗性(細胞のインスリン感受性が低下した状態)により、作用が不足しているケースもあります。日本では圧倒的に2型糖尿病が多く、生活習慣病と呼ばれる糖尿病はこのタイプの糖尿病です。
なお、この二つのタイプ以外に、「特定の原因によるその他の型の糖尿病」、「妊娠糖尿病」があります。
インスリン作用不足の程度による分類
生存のためインスリン治療が必要な状態インスリン分泌が絶対的に不足し、体外からのインスリン補給(インスリン治療)が欠かせない状態です。
高血糖是正にインスリン治療が必要な状態
生存のためにインスリン治療が欠かせないわけではありませんが、ほかの治療法では血糖値が十分に下がらず、血糖コントロールのためにインスリン治療が必要な状態です。
インスリン治療が必要ない状態
食事療法や運動療法、飲み薬による治療で血糖コントロールが可能な状態です。
2型糖尿病の多くは後者の二ついずれかに該当します。
糖尿病と診断される時
糖尿病かどうかは、高血糖が慢性的に続いているかどうかを確認して診断します。ただし、血糖値は食事などの影響で大きく変化しますので、以前は血糖検査を繰り返し行って糖尿病と診断していました。しかし最近、HbA1c(「治療の成績を知る指標」の項参照)という血糖状態を過去にさかのぼって調べられる検査を組みあわせることで、1回の検査で診断できるように改められました。
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ただ、血糖値かHbA1cのどちらか一方のみが糖尿病型の場合などでは、日を改めて再検査することもあります。
※75g ブドウ糖負荷試験
75gのブドウ糖を飲み、時間を追いながら血糖値を調べる検査です。血糖値の変動から、糖尿病型なのか、正常型なのか、あるいはその境界型なのか、パターンが示されます。
境界型の人は、今は大丈夫でも糖尿病を発病する可能性が高く、また、糖尿病の患者さんと同じくらい動脈硬化が進みやすいので、ふだんの食事や運動に気をつけるとともに、定期的に検査を受けるようにしましょう。正常型でも、空腹時血糖が100mg/dL以上、または1時間値が180mg/dL以上の場合も同様です。
| ブドウ糖経口負荷試験 |
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糖尿病の治療
糖尿病の治療は、合併症の発症・進行を食事療法
| カロリー | ||
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栄養教室 | ![]() | 宅配で
インターネットで |
| いろいろトライしてみてください | ||
具体的には病院で栄養士から指導を受けたり、講習会に参加するなどして、栄養バランスのとれた食事の仕方を覚えるようにします。「糖尿病食事療法のための食品交換表」を利用するのが標準的な方法です。
最近では、糖尿病の治療に配慮されたレトルト食品、カロリー計算された食事・食材の宅配、栄養計算が簡単にできるPCやスマートフォンのソフトなどが出ています。
運動療法
運動で体内に余分に溜まったエネルギーを消費すると血糖値は下がります。また、インスリンの細胞レベルでの働きが高まり(インスリン感受性が高くなり)、血糖コントロールがしやすくなります。さらに、血行がよくなる、ストレスが解消される、皮下脂肪が減る、骨格筋が増える、生活の活動度が高まるなど、多くの効果を得られます。運度の種類は、日常できるものならどんな運動でもかまいませんが、できるだけ全身を動かすものが勧められます。それまであまり運動をしていなかった場合には、次第に強い運動に移るようにしてください。週末だけに集中して運動するといった方法よりも、できれば毎日行できる運動を選びましょう。それには「歩くこと」が最も勧められます。
薬物療法
| 経口血糖降下薬 |
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| インスリン など |
経口血糖降下薬は膵臓からのインスリン分泌を増やしたり、細胞のインスリン感受性を高めたりして、血糖値を下げます。インスリン療法は直接体外から補充したインスリンが、血糖降下を助けます。どの薬物療法をいつから始めるかは、患者さんそれぞれの糖尿病のタイプや病状、合併症の進行具合など、さまざまな要因を総合して決められます。
治療の成績を知る指標
糖尿病は自覚症状に乏しい病気なので、治療がうまくいっているかどうかは検査を受けなければわかりません。血糖コントロールの具合を確かめるためには、次のような指標が用いられます。血糖値
![]() |
| HbA1cは、すぐは下がらない |
ヘモグロビンA1c (HbA1c)
赤血球の中にあるヘモグロビン(血色素)のうち、ブドウ糖と結合している特殊なヘモグロビン(グリコヘモグロビン)の割合をパーセントで表した指標です。過去1〜2カ月間の血糖コントロールとよく関係し、ヘモグロビンA1Cが高ければ、その時点の血糖値が正常だとしても、1〜2カ月間は血糖値が高い状態が続いていたことになります。健康な人のヘモグロビンA1cは4.3〜5.8パーセント(JDS値)です。ただし、測定方法の国際的な統一のために、近々、0.4パーセント高くして、4.7〜6.2パーセントが基準値となる予定です。
その他の指標
このほかグリコアルブミンや1,5-アンヒドログルシトールといった指標があり、それぞれ多少意味あいは違います。また、糖尿病は高血圧や脂質異常症(高脂血症)も合併しやすいので、血糖コントロールの指標以外に、血圧やコレステロール、中性脂肪なども定期的にチェックしておいたほうがよいでしょう。







