糖尿病セミナー

8. 小児の糖尿病(1) [基礎]

2007年6月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
大阪市立大学名誉教授 一色 玄 先生


I.どんな病気なのか

小児(子ども)の糖尿病とは

 糖尿病は、おとなの病気と考えられがちですが、子どもにも起こります。
 そればかりか、インスリンをつくる能力が極度きょくどに低下、あるいはなくなってしまう型(1型糖尿病)は、むしろ子どもに多く発病します。
 おとなに多くみられる糖尿病は、インスリンの分泌のしかたが悪くなったり、あるいはインスリンの効き方が悪くなるタイプ(2型糖尿病)ですが、最近は、この型が中学生や高校生にも多く発見されています。
 ふつう小児糖尿病という場合には、乳幼児にもみられ、10歳から15歳の間に発病年齢のピークがある1型糖尿病のことをさしています。

発病の原因について

 以前は、小児糖尿病は遺伝性の病気であると考えられていた時代もありました。しかし、現在では、患者さんの両親や兄弟に糖尿病が多くみられるのは、2型糖尿病の場合であり、1型糖尿病で家族に糖尿病のみられるのは、むしろ少ないことが知られています。
 ひとつの体をふたつに分けた場合と考えられる一卵性双生児いちらんせいそうせいじで、両方とも糖尿病になるのは、40〜50%です。このことは、遺伝を無視できないにしても、遺伝以外の条件が大きく発病に影響することを示しています。
 現在、自己免疫じこめんえきを起こしやすい体質などが遺伝すると考えられています。
 こういう体質をもった子どもが、ウイルスに感染し、あるいは化学物質の影響を受けると、すい臓でインスリンをつくるβ細胞べーたさいぼうを攻撃する免疫細胞がつくられます。この免疫細胞が、β細胞を破壊はかいして、インスリンをつくれなくしてしまいます。
 破壊が始まっても、最初は無症状で、時々尿糖が出るだけです。しかし、大多数のβ細胞がこわれると、インスリンが絶対的に不足し、糖尿病の症状が出てきます。β細胞の破壊が始まり、症状が出るまでには、数か月の場合もあれば数年間の場合もあり、この間は無症状であることも多いようです。
 1型糖尿病の大部分はこのような自己免疫によるものですが、なかには自己免疫の関わりが明らかでない場合もあります。
    ※自己免疫:自分の体の細胞を攻撃して破壊するような反応が起こること。

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