監修東北大学名誉教授 後藤由夫先生
編集
東邦大学名誉教授 磯貝 庄 先生
栄養指導
東邦大学医学部付属大森病院栄養部
本間清貴先生・森本修三先生
- 腎臓をいたわる食事療法を始めます
- 食事療法の進め方が変わってきます
- 腎症の食事療法のポイント
- わからないことは積極的に相談しましょう
ステップ1 適切なエネルギー量とたんぱく質量を知る
ステップ2 単位の配分を知る
ステップ3 食品交換のルール
ステップ4 献立の工夫と注意点 ステップ5 献立を作ってみる
腎臓をいたわる食事療法を始めます
糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症のひとつで、腎臓の機能が少しずつ低下する病気です。腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿として排泄する臓器です。腎症が進行すると、腎臓がほとんど働かない腎不全になり、器械で血液をろ過する、人工血液透析療法が必要になります。腎症の進行を防ぐには、糖尿病の治療(血糖コントロール)のための食事療法に加え、たんぱく質や食塩の摂取を控えて腎臓の負担を少なくする、腎症治療のための食事療法が重要になります。
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※腎症についての説明は、このコーナーの「糖尿病による腎臓の病気」のページをご覧ください。
食事療法の進め方が変わってきます
腎症の食事療法は、次の表のように、それまでとは内容が変わってきます。
| 糖尿病の食事療法と糖尿病性腎症の食事療法の比較 | ||||||||||||||||||||||
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たんぱく質を制限します
一番の相違点は、たんぱく質の摂取を制限することです。たんぱく質は、炭水化物や脂質と並び、必要不可欠な栄養素ですが、なぜその摂取が制限されるのでしょうか?体内の余分なたんぱく質は、尿素などの老廃物となり、腎臓でろ過されて尿中に排泄されます。腎臓の機能が低下している人がたんぱく質を摂り過ぎると、老廃物を排泄するための腎臓の負担が大きくなり、そのことが腎症の進行を早めてしまうのです。
腎症の治療は、たんぱく質の摂取制限などにより、腎臓の負担を軽くして、残っている腎機能をできるだけ長く保ち、腎不全への進行を防ぐことが目的です。
炭水化物・脂質を増やします
単にたんぱく質の摂取を減らしただけでは、指示エネルギー量を満たすことができなくなります。そこで、たんぱく質を減らす分は、炭水化物や脂質の比率を増やして補います。たんぱく質は、血液や筋肉を作り出すなど、栄養素としての役割があります。一方、ヒトのからだはエネルギーの補給を最優先させますので、炭水化物や脂質によるエネルギーの補給が十分でないと、たんぱく質が本来の目的に使われずに、エネルギー源として利用されてしまいます。
それを防ぐために、必要な炭水化物・脂質は十分に摂らなければいけません。炭水化物と脂質を増やすことで、たんぱく質は栄養素として効率的に活用され、腎臓に余計な負担をかけずにすむようになります。
炭水化物を増やすことで血糖コントロールが乱れるようなら、薬物療法など他の方法でコントロールします。
塩分を制限し血圧をコントロールします
腎症が起きるとからだに塩分が溜まりやすくなり、その結果、血圧が上昇します。高血圧は、腎症の進行を加速させる重大な原因のひとつです。このため、腎症の食事療法では、食塩の摂取も制限します。カリウム摂取にも注意が必要です
腎症が進行すると、カリウムが尿中へ排泄されにくく、血液内のカリウム濃度が高くなります。カリウムが多過ぎると、頻脈〈ひんみゃく〉や心不全が起きやすくなりますので、やはり摂り過ぎに注意します。腎症の食事療法のポイント
腎症のための食事療法を、できるだけ簡単に日常生活に取り入れられるよう、実際的な方法を解説したものに、「糖尿病性腎症の食品交換表」(編著者:社団法人日本糖尿病学会、発行所:株式会社文光堂)があります。これは、「糖尿病食事療法のための食品交換ここでは、「糖尿病性腎症の食品交換表(以下、腎症の交換
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※食品の分類や単位計算、交換の仕組みなどの基本は「糖尿病食事療法のための食品交換表」と同じなので、詳しい解説は省略します。このコーナーの「食事療法のコツ(1)―基礎
ステップ1 適切なエネルギー量とたんぱく質量を知る
まず、あなたが1日に必要なエネルギー量を、医師に決めてもらいます(指示エネルギー量)。これは糖尿病の食事療法の最も基本的なことで、腎症の食事療法でも変わりません。指示エネルギー量は患者さんの体格や活動状況、腎症の進み具合などを総合的に判断し決められます。同じように、たんぱく質も「1日何グラム」と指示されます(指示たんぱく質量)。指示エネルギー量や指示たんぱく質量は、腎症の進行に合わせて、少しずつ変化します。
| 糖尿病性腎症の病期別食事療法の目安 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ● | 総エネルギーの単位は体重(実際の体重ではなく、標準体重)1kg あたりのキロカリー、たんぱく質の単位は標準体重1kg あたりのグラム数、食塩・カリウムの単位はグラム数。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ● | 上記のほか、むくみがある場合には、水分の摂取制限が加わります。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| (「厚生省糖尿病調査研究報告書」から引用し、まとめなおしたもの) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ステップ2 単位の配分を知る
次に、指示エネルギー量と指示たんぱく質量を守り、たんぱく質以外の栄養も過不足なく摂るために、表1〜表6の各表から何単位ずつ摂ればよいのかを把握します。腎症の交換| たんぱく質量のA〜D区分 1
腎症の交換表には
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例えば1日1840キロカロリー(23単位)、たんぱく質40グラムの場合、表の左側のように配分します。23単位は、表1に12単位(A区分8単位、治療用特殊食品4単位)、表2に1単位、表3に2単位(A区分0.5単位、B区分1.5単位)、表4に0.7単位、表5に3単位、表6に1単位、調味料に0.8単位、エネルギー調整食品に2.5単位というように振り分けます(これ以降は、この単位配分を例に解説していきます)。
1日の単位配分がわかったら、次はそれを朝食、昼食、夕食、および間食に分けます。表1は3食それぞれ4単位ずつに分け、そのうちいずれかに治療用特殊食品を利用します(表の右側参照)。表3、表5、表6も3食なるべく均等に配分します。表2、表4、エネルギー調整食品は、3食または間食として配分します。それぞれの食事の単位数に、あまり差が生じないようにしましょう。調味料は、その日の献立にあわせて使い分けます。
単位をどのように配分すればよいかは、一般には医師や栄養士が、それぞれの患者さんの食習慣などを参考に決めて、患者さんに指示します。
| 食事指導票 1日23単位 1840kcal たんぱく質 40g の場合 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ステップ3 食品交換のルール
腎症の食品交換は、糖尿病の食事療法の交換ルールに、表1と表3のたんぱく質量区分の制限が加わりますが、同じ表、同じ区分の食品は自由に交換できます。例えば、表3のあじ開き干し1枚(40グラム)は、ローストビーフ(40グラム)と交換できます。同じ表3のB区分の1単位だからです。しかし、C区分のあじ中尾(食べる部分が60グラム。開き干しでないもの)とは、表や単位数が同じでも交換できません。
区分を越えて交換しようとして、食品の重量を無理に調整すると、たとえたんぱく質量は調整できたとしても、エネルギー量(単位数)に過不足が生じてしまいます。区分を越えての交換は、栄養士に相談してからにしましょう。また、表3には食塩や動物性脂肪が多い食品もありますので、偏りをなくし、できるだけ多くの食品を選ぶことが大切です。

ステップ4 献立の工夫と注意点
低たんぱく食品の利用
たんぱく制限をすると、通常の食品だけでは指示エネルギー量を満たすのが難しいことがあります。そんな患者さんのために、たんぱく質含量を減らしたり、たんぱく質がわずかしか含まれていない食品が開発されています。
腎症の交換表では、これらの低たんぱく食品のうち、主食として使える食品を
・治療用特殊食品
治療用特殊食品には、通常の食品と同じ重量(単位数)で、たんぱく質を半分以下に減らしたごはんやパン、めん、でんぷん製品、小麦粉などがあります。
1日23単位、たんぱく質40グラムのケースでは、治療用特殊食品を1日4単位以上使用するのが望ましく、さらにそれより多く(8〜11単位)使用すれば、表1では通常の食パンやじゃがいもなどB区分の食品を使えるようになります。また、表3のC区分の食品を使用できたり、表3自体への配分を多くすることもできて、変化に富んだ料理を楽しめます。
・エネルギー調整食品
エネルギー調整食品には、ゼリー類や油が練り込まれた菓子、清涼飲料水、くだものの缶詰、ジャム、あめなどがあります。この例のケースでは、間食とあわせて2.5単位とります。
治療用特殊食品やエネルギー調整食品は、医師や栄養士の指導を受けて、上手に食事療法に取り入れてください。
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食塩・カリウムの制限には
腎症の交換表では、1単位中の食塩含量が記載されていて、食塩含量が多いものはその数値が赤字で示されています。また、500ミリグラム以上のカリウムが含まれている食品には「K」マークがついています。食塩・カリウム制限がある人は、これらの数値や記号に注意しましょう。カリウムは水に溶けるので、野菜を水にさらす、煮ものの煮汁を捨てるなどの工夫で、ある程度減らすことができます。たんぱく質の“質”に注目
牛肉・豚肉・鶏肉・マグロ(赤身)などの動物性たんぱく質は、腎臓内の血流を増やして腎臓に負担をかけます。そこで、大豆製品などの、腎臓に負担をかけることの少ない、植物性たんぱく質の比率を増やすことがすすめられます。また、たんぱく源が偏ると、必須アミノ酸(体内で合成できず、摂取したたんぱく質から得なければならない)が不足することもあるので、好き嫌いによる偏食をしがちな人は、栄養士と相談してください。●このほか、下の表のように、糖尿病の食事療法と異なる点がいくつかありますので、気をつけましょう。
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ステップ5 献立を作ってみる
それでは、いよいよ献立を立ててみましょう。腎症の食事では、たんぱく質を減らした分のエネルギーを油脂類、治療用特殊食品、エネルギー調整食品で補います。また、表1、表3の区分に気をつけて献立を作りましょう。まずは主食の種類や配分を考え、次に主菜、副菜、くだもの、汁ものの順に献立を考えます。エネルギー調整食品は 2.5単位使用しますが、昼食0.5単位、間食2単位と分けて使うと、摂取エネルギーのばらつきが少なくなります。治療用特殊食品は夕食に使用すると、おかずの材料の幅を増やせます。1日23単位でたんぱく質 40グラムの場合、このような献立例ができあがります。
| 1日23単位、たんぱく質 40g の献立表 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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それでは、この献立を別のメニューに交換してみましょう。昼食を洋風に変えるにはどうすればよいでしょうか。和風メニューの構成はこのようになっています。
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(1) 炒めビーフン(油、野菜含む)4.5単位
(2) 焼き魚(シルバー)1単位
(3) スープ(かたくり粉、野菜含む)0.2単位
(4) 茶巾しぼり(さつまいも、こなあめ、さとう、あんず含む)1.2単位
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・クロワッサン2個とジャム 4.5単位
・炒り卵 1.5単位(卵と油)
・野菜サラダのオーロラソースがけ 0.9単位(野菜とマヨネーズ、ケチャップ)
・紅茶(レモンティー)
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表1は、(1) 炒めビーフンのビーフン 3.3単位と (4) 茶巾しぼりのさつまいも 0.6単位、(3) スープに使うかたくり粉 0.1単位(いずれもA区分)を→クロワッサン2個(80グラム、A区分4単位)に、
表3は、(2) 焼き魚(シルバー)1単位(B区分)を→炒り卵(鶏卵1個 50グラム、B区分1単位)に、
表5は、(1) 炒めビーフンの油1単位を→炒り卵の油(5グラム、0.5単位)と野菜サラダのオーロラソースのマヨネーズ(5グラム、0.5単位)に、
表6は、(1) 炒めビーフンの野菜と (3) スープの野菜を→野菜サラダと炒り卵の付け合わせなどの生野菜計 100グラムに、
調味料は、(4) 茶巾しぼりのさとう 0.1単位を→オーロラソースのケチャップ(6グラム、0.1単位)に、
エネルギー調整食品は、(4) 茶巾しぼりのこなあめ 0.4単位とあんず缶詰 0.1単位を→クロワッサンにつけるジャム(15グラム、0.5単位)に。
こうして洋風メニューにした場合も合計で 6.9単位。これで交換できました。
このようにして、一度作った献立を、同じ表の仲間、同じ区分の食品と交換し、バラエティーに富んだ献立を自分で作っていくことができます。

わからないことは積極的に相談しましょう
腎症の食事療法は、たんぱく質を減らし、その減らした量に相当するエネルギーを炭水化物や脂質に振り分けたり、病期によっては総エネルギー量を増やすこともあって、それまでの糖尿病の食事療法と内容が変わります。このため、糖尿病の食事療法をきっちり行っていた人ほど、新しい食事療法に慣れるまで戸惑う面が多いかもしれません。また、腎症の治療は、治癒をめざすというよりも、いかに進行を遅らせるかということが主目的ですので、食事療法を正しく進めても、腎機能を
しかし食事療法は、腎症の進行を遅らせる有効な手段のひとつです。わからないことや具体的な料理方法などは主治医や栄養士によく聞き、食事療法の意味を理解して、腎臓をいたわる食生活をがんばって続けていきましょう。












