ニュース

2012年06月18日

塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる

「減塩サミット in 呉2012」で、FMD測定体験コーナーが人気
 国内の高血圧の患者数は4,000万人とも言われ、高血圧は日本の“国民病”とされている。一方、食塩の摂取量が多い食生活が高血圧を招くことが広く知られるようになったことで、日本人の塩分摂取量は緩やかに減ってきた。しかしながら、近年はその摂取量も下げ止まり状態にあり、諸外国に比べると未だ多い。そのため、現在“さらなる減塩”に向けて国民的な啓発を促すべく、多くの取り組みが行われている。その一つとして、世界高血圧デー、日本高血圧週間にあわせ、5月26〜27日、広島県呉市にて、研究者と一般市民がともに参加し「減塩サミット in 呉2012」が開催された(主催:「減塩サミット in 呉2012」実行委員会、共催:日本高血圧学会・日本高血圧協会など)。

 会場には、学術研究成果の発表のほか、減塩食の展示や販売・屋台サービス、検査体験コーナーなどが設けられ、2日間にわたり全国各地からの多数の参加者で賑わった。非侵襲で血管内皮機能を把握できるFMD(Flow Mediated Dilation.血流依存性血管拡張反応)測定コーナーは、昼ごろまでにその日の予約が埋まってしまうほどの人気。測定を終えた体験者からは、「血管は見えないため、知らない間に病気が進行しているということがあるので、機会があったらまた是非みてもらいたい」、「脳梗塞になった親戚がいるので、自分も血管の病気が気になっていた」、「(血管を直接みているので)分かりやすい。実際に血管の働きがわかるので、自分も知りたいと思って受けた」、「結果が良かったので安心。今後も食事や運動に気を付けたい」など、さまざまな反響があった。

高食塩による血管への悪影響で、新たな知見も
 塩分摂取とFMDの関係については近年、新たな知見が蓄積されつつある。

 食事摂取後のFMDの経時的変化から、高食塩食を摂取するとその直後の血管内皮機能が低下するとのオーストラリアの研究者による論文が、2011年のThe American Journal of Nutrition 誌に掲載されている。

 16名の健常者に対し、塩分以外の組成は同一の「低食塩食」(ナトリウム130mg)と「高食塩食」(同1494mg)を無作為に別々の機会に摂取してもらい、食前および食後30分ごとに、上腕におけるFMD、血圧、および手指での末梢動脈拡張反応指標であるRHI(Reactive Hyperemia peripheral arterial tonometory Index.反応性充血指数)を測定したしたところ、血圧やRHIは両群間に有意差はなかったものの、FMDについては、高食塩食を摂取後の30分値、60分値が有意に低下していたという()。

高食塩食は低食塩食より、摂取後の血管内皮機能が有意に大きく低下する
〔Am J Nutr 2011;93:500-5〕

 食塩摂取と血管障害の関係は従来、食塩過多が血圧を上げ、その状態が継続することで血管内皮機能が低下し血管の老化が加速されて、脳卒中や腎臓病、心臓病などが起きやすくなるという長期的なスパンでとらえられてきた。しかしこの論文の結果からは、食塩負荷による急性反応としての血管内皮機能低下も臓器障害に関与している可能性が想定される。

 糖尿病において、食事による糖負荷で生じる食後の一時的な高血糖が動脈硬化の独立した危険因子であることは既に明らかになっている。高血圧治療における一時的な食塩負荷の影響についても、今後の研究が注目される。

◇FMD関連情報:
[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲